2011年6月18日(土)「しんぶん赤旗」
きょうの潮流
セシウムは、私たちの暮らしと切っても切れない間柄の元素です。なにしろ、時間の単位1秒の長さを決めているのですから▼かつて1秒は、地球の自転をもとに定めていました。しかし1967年から、天然に存在するセシウム133原子の出す電磁波の周波数によって割り出しています。といっても、ここでのしくみの解説は、とうてい記者の手に負えません▼セシウムは1860年、鉱泉の中でみつかりました。発見した人は、ドイツの物理学者キルヒホフと化学者ブンゼン。分光器で観測すると青だったので、青空の色を表すラテン語の言葉にもとづき、「セシウム」と名づけられました▼福島原発がまき散らすセシウム137は、核分裂で生まれます。天然には存在しません。崩壊し、物の内部を通り抜ける力の強いガンマ線という放射線を出します。半減期は30年と長い。人体に入ると筋肉などに集まり、ガンマ線が全身に影響をおよぼします▼福島第1原発で、セシウム137を吸い取って汚染水を浄化する装置の試運転を始めました。浄化した水で原子炉を冷やすようにしないと、汚染水をためる場所がなくなり、あふれ出します。しかし、新たな難題がもちあがります。浄化すれば出てくる、高い濃度の放射能を含む廃棄物をどう処分するか▼各地の下水処理場では、それほどの濃度ではないものの、汚泥がセシウム137に汚染されています。たまり続け、今月末で満杯の町もあります。文字どおり、一刻一秒を争う事態です。