2011年6月18日(土)「しんぶん赤旗」

主張

「馬毛島」基地化

爆音被害の押し付け許さない


 21日開かれる日米安全保障協議委員会(2プラス2=外交軍事閣僚協議)を前に、沖縄の米軍普天間基地への垂直離着陸機オスプレイ配備、名護市辺野古への新基地建設、共同開発した迎撃ミサイルの輸出問題などが急展開しています。防衛省が関係自治体に正式に伝えた、鹿児島県西之表市から12キロの馬毛島(まげしま)を米空母艦載機の離着陸訓練基地とする計画もその一つです。辞任がとりざたされている菅直人首相が、米国の歓心を買うために譲歩に譲歩を重ねるのは見苦しい限りです。

恒常的な訓練施設要求

 2006年5月の米軍再編に関する「日米合意」は、神奈川県厚木基地の空母艦載機部隊を山口県岩国基地に移すのに伴い、「恒常的な空母艦載機離着陸訓練施設」を「できるだけ早い時期に選定」すると明記しました。現在離着陸訓練が行われている硫黄島(東京都)に代えて、より近くに恒常的な訓練基地を探すというものです。米政府はこの「日米合意」をたてに日本に早期の選定を迫り、防衛省は住民の反対を無視して種子島沖の馬毛島の選定を急ぎました。

 夜間離着陸訓練(NLP)を含む艦載機部隊の離着陸訓練(FCLP)は、夜も昼も激しい爆音を伴うものです。周辺での低空飛行や墜落など重大事故の危険もあり、周辺の自治体・住民にとって百害あって一利もない軍事活動です。

 馬毛島は無人島だから問題がないと政府が考えているのなら、大間違いです。わずか12キロ先の種子島にある西之表市、中種子町、南種子町には約3万2千人もの住民が住んでいます。40キロ先の屋久島には約1万3千人が住んでいます。基地を中心に広い範囲を周回しながら離着陸訓練を行う艦載機の爆音が住民を苦しめるのは目に見えています。種子島や屋久島で大きな比重を占める観光や農林水産業への影響も深刻です。

 防衛省は、訓練は1回約10日間、年間3回程度と説明していますが、住民はその間、夜の安眠も家族のだんらんも妨げられます。年間30日くらいだから我慢せよといわんばかりの政府の態度に住民が怒るのは当たり前です。

 西之表市など1市3町がつくっている「米軍基地等馬毛島移設問題対策協議会」を中心に反対の火の手は激しくなっています。にもかかわらず「2プラス2」を前にして防衛省が周辺自治体への通達を始めたのは、米政府の要請に進んで応え、あわよくば延命のテコにしようという菅直人政権の狙いが露骨です。文字通りの党利党略のために住民を犠牲にするのは絶対に許されません。

負担のたらい回しやめよ

 馬毛島の基地化をやめよとの追及に北沢俊美防衛相が、「あれもだめ、これもだめ」では「沖縄の負担軽減をしていく中ではあまり生産的ではない」とのべたのは重大です。沖縄の基地問題にからめ、沖縄県民をだしにして馬毛島の基地化を進めるなど言語道断です。

 NLPを含む空母艦載機の離着陸訓練では、厚木基地などの周辺住民が苦しめられてきました。硫黄島の使用でやや減っているとはいえ苦しみは変わりません。その苦しみをたらい回しにするのはやめるべきです。日本政府がいまやるべきことは、離着陸訓練基地探しではなく、米国内では許されない異常な訓練の中止です。





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