2011年6月17日(金)「しんぶん赤旗」
物資高騰ずしり
震災影響・浦和民商が調査 埼玉
コメ1俵2500円増 内装パネル1.5倍
東日本大震災から3カ月、その被害が、商業分野で拡大しています。さいたま市の浦和民主商工会(浦和民商)は4月に実態調査を実施。さまざまな職種に被害や影響が出ています。
コンクリート構造物解体・切断業の田中幸一さん(仮名)は、「震災後、仕事がまったく動かない。解体工事のための予算がほかに回されたり、解体そのものが延期されたりしている」と苦笑いします。仕事がなくても、8人の従業員の賃金は払わなければなりません。
住宅建築業の中井信二さん(仮名)も、「大手建築資材会社が、製造するパネルを全部東北に回している。6月末まで工事に着手できない状態だ」と話します。4月は小さいアパートの仕事ができたものの、5月は仕事ができませんでした。「『何もしないよりはまし』と、近所の家の土間のひび割れとブロック塀を直したよ」
建築資材が全般的に値上がりし、業者の負担になっています。内装に使用するコンパネは、震災前まで、たたみ1畳の大きさで800〜1000円だったものが、約1・5倍に。断熱材や外壁材、電線なども値上がりしています。
影響は食品業にも及んでいます。有機米やアレルギー対応食品を扱う米工房を営む男性(56)は、コメの卸値の上昇を指摘します。「震災後、1俵(60キログラム)の値段が2500円ほど上がり、下がらない。精米後、店頭に置く1袋(10キロ)当たり500円前後値上がったまま。利はほとんどないか、赤字だ」と訴えます。さらに男性は、拡大し続ける福島原発事故の放射性物質の被害を見て、「将来、コメの収穫量が不足するのではないか。安全な米を売り続けることができるのか」と、心配しています。
浦和民商が実施した大震災の経営にたいする影響実態調査では、広告チラシの折り込みの減少や節句人形の販売不振、自粛ムードの予約キャンセルによる売り上げ減などの事例が報告されました。「資金繰りが厳しい。支援策を拡充してほしい」「大企業中心の復興ではなく、地元業者への直接発注で中小業者の仕事の確保を」などの声が寄せられました。
同民商は岩槻、大宮の各民商、日本共産党市議とともに5月中旬、さいたま市に震災の被害、影響を受けた中小業者への支援を求めて交渉しました。浦和民商の大谷智也事務局長は、「震災による消費の自粛、計画停電などの間接的被害によって、中小業者の売り上げは大きく落ち込んでいる。しかし、中小企業庁にも県、市にも、間接的被害へ対応する動きがみられない。支援策の創設を求めていく」と話します。
全国商工団体連合会(全商連)と各都道府県商工団体連合会もアンケートや聞き取り調査を実施。福島原発事故による風評被害、仕入れ品・資材の不足に値上げと、多業種にわたって被害が出ています。全商連は「東日本大震災からの地域復興に向けた緊急提言」を発表。中小業者の経営再建を地域の復興計画に位置づける―などの早急な施策を政府に求めています。 (川田博子)