2011年6月16日(木)「しんぶん赤旗」
主張
原発からの撤退
「縮小・廃止」の世論に応えよ
いまだ収束のめどが立たない東京電力福島第1原子力発電所の事故を機に、原子力発電の「縮小・廃止」を求める国民世論が、いよいよ鮮明になっています。政治的な立場を超えた撤退を求める運動も広がり、各界の有識者などから原発政策を転換すべきだとの発言も相次いでいます。
世界でもスイスやドイツに続いて、イタリアが国民投票で原発からの撤退を決めました。日本でも原発からの撤退を政府が決断し、それに代わる自然エネルギーの導入に本格的に踏み出すかどうかが問われています。
福島原発事故の衝撃
「原子力発電を段階的に減らし将来はやめる」に「賛成」が74%、「反対」14%。原子力発電の利用に「賛成」(37%)の人でも63%が「段階的に減らし将来はやめる」と回答(「朝日」14日付)。
原子力発電を「減らすべきだ」が47%、「すべて廃止すべきだ」が18%で、「増やすべきだ」は1%だけ(NHK同日放送)。
原子力発電の「縮小・廃止」を求める国民世論は明白です。「読売」が今月はじめに行った調査でも、原子力発電を「減らすべきだ」が45%、「すべてなくすべきだ」が16%で、「増やすべきだ」は2%(5日付)と、同じ傾向でした。
日本のマスメディアは長年にわたって原発問題をタブーにしてきました。そのマスメディアが原発の是非を取り上げ、「縮小・廃止」が国民の世論になりつつあると伝えだしたのは注目されます。「朝日」自身「『脱原発』にかかわる意識をこうした形で聞いたのは初めて」(同日付)と認めています。
日本でも世界でも、東電福島第1原発の重大事故が、国民世論に大きく影響していることは明らかです。国際的な基準で最悪の「レベル7」に達した福島原発の重大事故は、放射性物質の拡散で広範囲に被害が広がり、現在だけでなく将来にも害を及ぼし、住民の暮らしと地域そのものを破壊する、文字通り、「異質」の災害です。
もともと原子力発電は大量の「死の灰」を生み、いったん事故が起きればコントロールがきかなくなる未完成の技術で、世界有数の地震国で津波の被害も多い日本に集中立地させる危険が指摘されてきました。予想された地震や津波への備えさえ欠き、重大な事態を引き起こした東電福島原発事故は、その危険を改めて浮き彫りにしました。原発からの撤退を求める世論が急速に広がるのは当然です。
最近、作家の村上春樹さんがスペインでの文学賞の授賞式で、原爆を体験した日本は、原発に対しても「『ノー』を叫び続けるべきだ」とあいさつしました。経済学者の中谷巌さんは原発を推進している「産経」の正論欄で、「日本復興の起爆剤として敢えて『脱原発』を提案したい」と主張し、注目されています。原発からの撤退を求めるこうした声に、政府は真剣に耳を傾けるべきです。
国民的な討論と合意を
日本共産党は、原発からの速やかな撤退と、自然エネルギーの本格的な導入に向け、国民的な討論と合意形成を呼びかけています。
菅直人政権がエネルギー政策の見直しは口にしながら、なお原発をその柱にする態度を変えていないのは重大です。原発からの撤退を求める世論と運動を広げることが急務です。
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