2011年6月14日(火)「しんぶん赤旗」
トルコ与党議席減
総選挙 単独で改憲は不可能
【カイロ=伴安弘】トルコ議会選挙(一院制、定数550)が12日、行われ、エルドアン首相が率いるイスラム穏健主義政党・公正発展党(AKP)が過半数を制したものの、前回総選挙時よりも議席を減らしました。
開票率99・7%で、AKPは得票率49・9%。議席は325で、改選時331議席を6議席下回りました。
一方、野党の共和人民党(CHP)は得票率26%で、32議席増の135議席を獲得。極右の民族主義者行動党(MHP)は13%で、18議席減の54議席。クルド系の平和民主党(BDP)は5・8%で35議席を獲得しました。
今回の選挙でエルドアン首相は憲法改正を単独で行える3分の2の議席獲得をめざしましたが、この目標をはるかに下回る結果になりました。同首相は憲法改定でフランス型の強大な権限を持つ大統領制の導入を目指し、またイスラム教徒の権利尊重を改定内容に盛り込む意図だったといわれます。
同首相は「国民は新憲法をコンセンサス(合意)と交渉を通じてつくるよう求めるメッセージを与えた」とし、野党各党だけでなく、議会外のメディア、非政府組織(NGO)、学会などとのコンセンサスを求めていくと語りました。
与党AKPは、選挙公約で、黒海とエーゲ海を結ぶ運河やイスタンブールの外での新しい都市建設をうたいました。こうした公約は成長率8・9%、失業率の低下など、好調な経済に乗って議席拡大を狙うためのものでした。02年にAKPが政権について以来、1人当たり国内総生産(GDP)はほぼ倍増しています。
しかし、選挙結果は、国民が経済成長をもたらしたAKPの政策を認めながらも、同党の負の面にも目を向けたことを示しました。
経済界の指導者らは4日に「トルコの民主主義を推進するためには与党への反対票を投じることだ」とする訴えを出していました。AKPの9年間の統治下で不正・腐敗は減ったものの、平和を訴えるだけで投獄されているジャーナリストが50人以上もおり、女性の権利についての国際評価では131カ国中126番目(10年調査)という低さです。
トルコの選挙制度 選挙区ごとの比例代表制が基本。選挙区は人口比で分けられます。最大の都市イスタンブールは定数が85、首都アンカラは31、過疎地の多くの県の選挙区は定数1です。有効投票総数の10%以上の得票がないと議席が得られません。
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