2011年6月14日(火)「しんぶん赤旗」

主張

「V字形」通告

県民総意への裏切り許さない


 北沢俊美防衛相が沖縄を訪れ、21日に開く日米安全保障協議委員会(2プラス2=外務軍事閣僚協議)で調整する名護市辺野古の米軍新基地の工法を、2本の滑走路をもつ「V字形」にすると仲井真弘多県知事に通告しました。垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの普天間基地への配備も伝えました。

 日米両政府が普天間基地の「移設」と称して「合意」した辺野古につくる新基地を「V字形」にするのは、アメリカの要求どおりです。普天間基地の県内「移設」に反対し着工を阻止してきた、圧倒的な県民世論を裏切るものです。

対米追随の異常ぶり

 新基地を「V字形」にする案は自公政権時代の2006年の「日米合意」にもりこまれましたが、民主党は一昨年の総選挙で普天間基地の「国外、最悪でも県外」への移設を公約に掲げました。ところが鳩山由紀夫前政権が昨年5月公約を裏切って県内「移設」を合意したのに続き、菅直人政権は昨年8月の日米専門家協議の報告書で「V字形」と滑走路を1本とする「I字形」を併記して提案しました。文字通り公約を踏みにじる、県民への暴挙です。

 沖縄県民は繰り返し県内「移設」反対の意思を表明しており、仲井真知事も県内「移設」は受け入れないとの考えを明らかにしています。こうした県民世論を前に、日米両政府内にも2014年までの基地「移設」は難しいとの見方が広がっているのに、北沢氏がこの時期に米政府の要求してきた「V字形」での新基地建設を認めたのは、「2プラス2」を前にした異常な迎合というほかありません。退陣が取りざたされている菅政権にとって、米側の歓心を買うことで延命につなげる打算からといわれても仕方がないものです。

 普天間基地が宜野湾市民を苦しめているように、名護市辺野古の新基地が名護市や周辺地域の住民を、墜落の危険や爆音被害で苦しめることは明白です。広大な新基地建設で、米軍は世界各地に“殴り込み”作戦を進める海兵隊の最新鋭基地を持つことになります。「基地のない平和な沖縄」をめざす県民が、絶対に認めるわけにいかないのは当然です。

 米軍基地をたらい回しし、基地の重圧を重ねるだけの「移設」をやめさせることこそ、市民・県民の願いに応えるものです。北沢氏が、「移設」が実現しない場合の普天間基地存続の可能性を示唆し、米軍が来年10月から配備するオスプレイの普天間配備を伝えたのは重大です。オスプレイは開発段階から墜落事故が多発している欠陥機であり、すさまじい爆音を伴うことから県民が長年反対し続けてきているものです。米軍が来年から配備を強行するというなら、その前に普天間基地を閉鎖し撤去の方向に向かわせるしかありません。

普天間閉鎖・撤去を

 普天間基地の県内「移設」を合理化するために、沖縄の米海兵隊が日本を「守る」「抑止力」だというのは「方便」にすぎません。世界各地への軍事介入を本務とする海兵隊を駐留させるのは米軍の勝手な理屈で、国民の安全にとって百害あって一利もありません。

 新基地建設を急ぐのではなく、普天間基地をただちに閉鎖・撤去し、戦後67年もの間沖縄県民を苦しめてきた基地の重圧を取り除くことこそ、政府のつとめです。





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