2011年6月12日(日)「しんぶん赤旗」
東日本大震災復興基本法案
高橋議員の反対討論
衆院本会議
日本共産党の高橋ちづ子議員が10日の衆院本会議で行った、東日本大震災復興基本法案への反対討論の全文は以下の通り。
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私は日本共産党を代表し、東日本大震災復興基本法案に対し反対の討論を行います。
大震災から3カ月となります。今なお行方不明者が8146人も残され、懸命の捜索活動も続けられております。いまだに多くの被災者が避難所や自宅での不自由な避難生活を強いられ、明日の暮らしが見えない状況にいらだちと不安を募らせています。
東京電力福島第1原発の事故では、収束のめどがたたないまま、住民は住み慣れた土地を追われ、いつ戻れるのか分からない日々を送っています。
今、求められているのは、地震・津波や原発事故で破壊された被災者一人ひとりの生活基盤を再建することです。そのために必要な支援を速やかに、かつ、具体的に行うことであり、政府と国会は、そのために全力を集中すべきです。
本法案は、大震災からの復興の枠組みと基本理念を定めるもので、どのような理念を盛り込むかは今後の復興に重大な影響を与えます。日本共産党は、復興の基本は被災者が主役で、上からの押し付けであってはならないこと、生活の基盤、すなわち住まいと生業の再建が復興の土台であることを繰り返し主張してきました。法案はそうした肝心の点があいまいにされています。
法案は、復興施策は「21世紀半ばにおける日本のあるべき姿を目指して行われるべき」とか、わが国が直面する課題を解決するための「先導的施策」として行うなどとしています。この間の政府の復興構想会議の議論を見れば、こうした「あるべき姿」や「先導的施策」が、「新成長戦略」の推進をさすことは明らかです。漁業の集約と大規模化、民間企業の参入を認める水産復興特区に象徴されるように、これまでできなかった規制緩和、自由貿易などが叫ばれ、被災者が置き去りにされている感を否めません。
3党の修正は、地方公共団体の「責務」を盛り込みました。地方公共団体は国の定める基本方針を踏まえ、復興施策を講ずるとされました。これでは被災自治体は、被災地や被災者の実態よりも国の方針を優先しなければならないことになります。上からの押し付けが可能になる仕組みを担保したことになり、看過できません。
本法案のもう一つの目的は、菅内閣が作った復興構想会議を法的に位置付けようというものです。復興構想会議は、復興財源について、「基幹税」で償還するということも第1次提言素案に明記しました。法案は復興財源について、「償還の道筋」を明らかにすることを書き込んでおり、結果として、復興を口実とした消費税大増税に道を開くことになりかねません。
最後に、原発事故の被害からの復興です。法案は、事故収束のめどがついたら復興に取り組むとしているにすぎません。県民の声を聞く仕組みについても、復興構想会議の審議を踏まえるという枠組みの中で合議制の機関を置くとしているのみです。
現時点で収束がいつになるのか全くめどがたたないこと、高い放射線量が避難区域の外でもいくつも検出されるという状況のもとで、風評被害、精神的負担など、あらゆる損害への補償、営業や仕事をどうするか、長期的な生活支援と健康対策、そして、故郷の再生と人々が戻れるように、特別の枠組みを作ることが必要です。原発事故の収束と、これ以上、原発による危険と被害を拡大させないための国の決意を示すべきだと思います。
国会は、明日の暮らしが見えない、将来が描けないという、被災者と被災地のために、力を合わせるべきです。私自身の決意も込め、討論といたします。
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