2011年6月12日(日)「しんぶん赤旗」
きょうの潮流
雨の朝、さあ出発。すぐに、「速すぎるよ」の声がとびました。そうだよね。両親に手を引かれた小さな女の子や、つえが頼りのお年寄りもいるのですから▼住む町の「ストップ原発!ウォーク」の始まりです。あの大震災・津波、原発事故から3カ月。市内の5人が、「歩こう」とよびかけました。もとより個人としてのお誘いですが、あえて肩書や経歴を記すなら、こんな5人です▼市原水協の事務局長。わき水や景観をまもる環境運動家。無党派・日本共産党・生活者ネットワークの元市議会議員。みんな女性です。ともに歩いた80人ちかくのほとんども、女性でした▼「Bye(バイ)―Bye原発」「子孫にわびつつ 脱原発」「1歩でも2歩でも一緒に歩きましょう」。音声や文字でのさまざまな訴え。手をふって応える人がめだちます。注目度十分です。1時間半あまりで隣町に着き、午後はその市の「ウォーク」に合流しました▼歩く間、作家・村上春樹さんの言葉を繰り返し思い出していました。先日、スペイン・カタルーニャ国際賞の授賞式でのべました。「夢を見ることを恐れてはなりません。…我々は力強い足取りで前に進んでいく『非現実的な夢想家』でなくてはならないのです」▼村上さんは告発します。原発に疑いをもつ人は「非現実的な夢想家」と決めつけられたが、いまや地獄のふたをあけてしまったような原発のありさまこそ「現実」である、と。「非現実」とみなされた人たちが、実は「現実」を見通していました。