2011年6月10日(金)「しんぶん赤旗」
きょうの潮流
NHK連続テレビ小説「おひさま」は、なかごろに入っています。今週、婚礼の場面につい引き込まれました▼互いに「好きだから」のいちずな思いで結ばれる、主人公と青年。主人公の親友が青年に問い詰める。“彼女を幸せにする自信はある?”。明日は戦地へと向かう青年は、少し思案して答える。“その自信はないが、彼女と結婚して私が幸せになる自信はあります”▼心のきずなの強さをさわやかな言葉にくるんだせりふ、と受け止めました。もちろん、みる者に、2人の別れの切なさを予感させ、戦時の命のはかなさも考えさせます。時は、太平洋戦争のさなかです▼当時、結婚の手引がよく出ていました。政府が発行する写真雑誌は、「結婚十訓」を説きました。すべては「産めよ育てよ国のため」。“いくら人口をふやしても、体の弱い子や精神の劣る子を産んではかえって国家の負担だ”といって、「悪い遺伝の無い人を選びましょう」「なるべく早く結婚しましょう」…▼結婚は私事ではなく、子孫をつくり天皇の国を栄えさせる「公事」。婚礼では皇居に向かって拝め―。そんな手引書もありました。やがて、未婚女性を調べあげて台帳に載せ、結婚あっせんに乗り出す婦人会も現れます。「おめでた」めざし「進軍」を、と▼当時、「産めよ」の一方で「死して神となって、なおも皇室国家のために尽くす」と死が美化されました。生も死も国の都合しだい。「おひさま」の2人は、どんな生と死に直面してゆくのでしょう。