2011年6月10日(金)「しんぶん赤旗」

主張

消費税増税

「社会保障のため」は破綻した


 政府税制調査会(会長・野田佳彦財務相)が7日に全体会合を開き、消費税の大幅増税に向けた議論を開始しました。

 社会保障と税の「一体改革」に関する「集中検討会議」の社会保障「改革」案に基づいて検討するとしています。その「改革」案は社会保障の抑制を強める一方で2015年度までに消費税を5%増税し、将来は社会保障費をすべて消費税で賄うとしています。そうなれば消費税率は20%以上にはねあがります。民主党政権は社会保障と税の「一体改革」の成案について20日に決めるとしています。

「国民に説明できない」

 社会保障「改革」案をとりまとめた2日の検討会議では、これでは国民に説明できないという声が上がりました。「(増税の5%のうち)実質的に社会保障が増える分は1%分に見える。それで本当に国民を説得できるのかどうか。私は正直言って自信がない」―。自ら財政健全化論者だという福山哲郎官房副長官の発言です。

 「改革」案の説明資料は増税する5%のうち“社会保障が増える分”は1%分と明記しています。高齢化に伴う自然増や、本来何年も前に確保しておくべき基礎年金の国庫負担2分の1への引き上げ財源、財政赤字の補てんなどが4%分を占めています。

 これでは恥ずかしくて“社会保障の充実のために”という消費税増税の建前を国民に語ることもできない―。「改革」案は「重点化・効率化」を名目に社会保障の抑制策を並べ、政権中枢からも嘆きの声が出るような内容です。

 しかも“社会保障が増える分”とされる消費税1%分さえ確かではありません。政府の試算では年金支給開始年齢の引き上げや物価下落幅を上回る年金カット、生活保護費の縮小などによる予算削減額は計上していません。さらに民主党政権は公約に掲げていた自公政権の社会保障削減路線による傷痕の修復に背を向けています。自公政権が削った社会保障費は1・6兆円に上ります。全体として見ると社会保障はプラスにさえなりません。

 「改革」案は予算から消費税と社会保障を取り出して区分経理を徹底し、将来は社会保障費の全体を消費税でまかなう方針を掲げています。区分経理は、消費税以外の税収は社会保障に回さず、消費税で足りない分は赤字国債に頼っているように描いて、消費税増税がやむを得ないかのように見せるためです。

 社会保障の全体を消費税で賄うことにするなら、税率がはねあがるだけでなく、国民は社会保障の削減か消費税増税かの過酷な二者択一を迫られることになります。

 何より、社会保障の財源から所得再分配効果のある所得税や法人税を外して逆進性の強い消費税を充てることは、社会保障制度そのものの所得再分配効果を破壊する暴挙にほかなりません。

「大連立」の危険な流れ

 民主、自民両党の「大連立」で消費税の増税も強行してしまおうという動きさえ広がっています。日本経団連の米倉弘昌会長も「大連立」を実現し、財界が要求している消費税増税や環太平洋連携協定(TPP)の参加を進めるべきだとのべています。

 国民そっちのけの危険な流れを許さない世論を大きく広げていくことが求められます。





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