2011年6月9日(木)「しんぶん赤旗」

主張

兵器の「第三国移転」

国際紛争助長する危険は重大


 「武器輸出三原則」を崩す策動がきわめて重大な段階に入っています。北沢俊美防衛相が3日の日米防衛首脳会談で、日米で共同開発中の弾道ミサイル迎撃用のミサイル「SM3ブロック2A」を、米国以外の「第三国」に移転する計画を認める方針をゲーツ米国防長官に伝えました。

 日米が共同開発・生産した武器の「第三国移転」は、軍事的な支配を拡大したい米国と武器輸出で大もうけしたい日本の財界・兵器産業の一致した要求です。武器禁輸原則を崩してまで米国と財界の利益に奉仕する民主党政権の危険性は明白です。

事実上の「事前同意」

 ミラー米国防副次官は昨年12月米議会で証言し、2018年までに「SM3ブロック2A」を運用開始しポーランドに24基を配備する計画を示しました。北沢防衛相の発言がこの米政府の動きに呼応するものであるのは明らかです。

 日米共同で開発した武器を米軍の戦略で「第三国」に移転するのを日本が認めるのは重大です。米政府が一方的な決定を行ったのは、菅直人政権が「武器輸出三原則」の見直しを進め、「第三国移転」の承認に動き出すのを計算してのことです。「どうせ日本は認める」と踏んでいるのは明白です。武器輸出を禁止した日本の「武器輸出三原則」をないがしろにするもので、とうてい許されません。

 実際、日本政府は米政府の一方的決定に抗議すらしていません。「武器輸出三原則」を厳格に守る立場がないからです。

 日米両政府が06年に結んだ武器・武器技術の供与に関するとりきめは、日本の「事前同意のない」「第三国移転」を「禁止する」と明記しています。日本政府は「事前同意」をしていません。米政府の決定が日米とりきめに違反しているのは明らかです。

 にもかかわらず北沢防衛相が「わが国の同意があれば第三国移転は可能」と事態を追認し(5月18日参院決算委員会)、米政府の違反行為を不問にする態度を示してきたのは問題です。

 北沢防衛相は、ミサイル防衛の日米共同開発・生産に限って「三原則」適用を例外扱いにするといって「武器輸出三原則」に風穴をあけてきた小泉純一郎政権時代のやり方を、「いいとは思わない」「妥当性がない」ときびしく批判してきました。にもかかわらず自民党政権でさえ認めなかったやり方で「武器輸出三原則」を突き崩す無節操で道理のない態度は認められるものではありません。

 迎撃ミサイルの「第三国移転」を認めることは、日本が欧州の軍拡競争に巻き込まれ、国際紛争を助長することになります。憲法で戦争を禁止している日本を、武器を売りつけ他国民を殺傷する“死の商人”国家に変えさせるわけにはいきません。

禁輸政策守ってこそ

 外務省が08年に発行したパンフレットは、日本が「武器輸出三原則」を守り武器を輸出していないために、「国際社会をリードしています」と書いています。武器の「第三国移転」に踏み出すことは、武器禁輸を国是としているからこそ得てきた国際社会の信頼さえ失う亡国の道です。

 政府は「武器輸出三原則」の見直しも武器の「第三国移転」容認の企てもただちにやめるべきです。





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