2011年6月7日(火)「しんぶん赤旗」
布団など寝具支給できる
本紙取材に厚労省が回答
避難所 不眠で健康被害 “配布急いで”医療関係者
東日本大震災の避難所に、敷布団や枕といった寝具の支給が災害救助法で可能にもかかわらず、実際には多くの被災者のもとに届いていません。厚生労働省は本紙の取材に「救助として必要であれば支給できる」と回答しました。医療関係者は不眠による避難所での健康被害を指摘しており、自治体による支給の徹底が求められます。(本田祐典)
避難所の寝具は全国からの救援物資だのみで、輸送費がかさむ敷布団などは支援を呼びかけても集まりにくいのが実情です。現在も多くの被災者が避難所の床に段ボールや毛布などを敷いて寝床や生活スペースにしています。
7500人が避難所生活を続ける宮城県石巻市では、敷布団を持たない高齢者が「腰が痛い」と巡回の保健師に訴えます。「固い床に毛布を敷いただけで、寝心地が悪いのが問題」(市健康推進課の担当者)です。
「避難所で不眠に悩む人が多い」と語るのは、避難所の医療支援にたずさわる坂総合病院(塩釜市)の冨山陽介医師です。
不眠症状が続けば、▽高血圧など循環器系疾患の悪化▽精神的なストレス▽昼間から体がだるく、「生活不活発病」になりやすい―など深刻な健康影響を引き起こします。症状の緩和には、「いまからでも布団を配るなどして、より快適に眠れる条件をつくる」(冨山医師)ことが急がれます。
宮城県保健福祉部災害救助法対応チームは「災害救助法を使えば避難所で寝具を支給できることを被災自治体の多くが知らない。仮設住宅入居時に布団を渡すのが一般的になってしまっている」(担当者)と支給の遅れを認めます。
厚労省災害救助・救援対策室は「自治体が必要だと判断して寝具を支給すれば、それは常識的な範囲で災害救助法の経費でまかなえる」とし、避難所での敷布団、掛け布団、夏用タオルケット、枕、シーツなどの支給が可能だと説明します。
災害救助法による寝具の支給 災害救助法第23条は、被災者に対する救助の一つとして、「被服、寝具その他生活必需品の給与又は貸与」を定めます。また厚生労働省の災害救助事務取扱要領は「速やかに被災者に対して必要な被服、寝具その他生活必需品を配布すること」としています。