2011年6月7日(火)「しんぶん赤旗」

ウマラ氏勝利宣言 成長、生活改善に

南米ペルー 左派に支持


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(写真)5月2日広場でオジャンタ・ウマラ氏の勝利を喜ぶ支持者=5日、リマ(菅原啓撮影)

 【リマ=菅原啓】南米ペルーで5日実施された大統領選決選投票は、6日も開票作業が続き、中央選管の公式集計(開票率87%)によると、オジャンタ・ウマラ候補の得票率は、50・9%、右派のケイコ・フジモリ候補は49・1%となっています。

 民間会社の出口調査や選挙監視団体の独自集計にもとづく最終結果予想はいずれも、ウマラ候補が3〜5ポイントの差で優位とのべています。

 公式集計は、首都リマなどフジモリ候補の支持が強い地域が先行して進んでいます。このため、今後、地方部の集計が進めば、ウマラ氏との差は開いていくとみられます。

 ウマラ候補は首都リマ市内の広場で、「何百万人の国民の活動の結果、大統領府にたどり着くことになった」と勝利宣言。経済成長の成果を国民生活の改善のために活用する具体的な政策を改めて列挙しつつ、「私は公約を達成するまで休みなく働く」と語り、数万人の支持者から盛んな拍手と歓声を浴びました。

 テレビで出口調査の結果を見て集会に駆け付けた女子学生ミリアム・マイスさん(23)は、「教育予算を増やすというウマラの主張に共感して投票した。経済成長を目指すだけでなく、国民すべてが人間として尊重され、成長できる国にしてほしい」と新政権への期待を語っていました。

 フジモリ候補は、まだ敗北を認めていません。


解説

新自由主義拒んだ有権者

 ペルー大統領選の決選投票で左派のウマラ候補が勝利を確実にしたことは、なによりもまず、多くの国民が、大企業の利益を優先し、民営化や労働法制の改悪を進めてきた新自由主義政策の継続を拒否した結果です。また旧フジモリ政権の人権抑圧や汚職の復活を拒否する人が多くいることも示しました。

 ペルーでは、1990年代のフジモリ政権が強権的なやり方で新自由主義政策を導入。経済成長率は、8・8%(2010年)と中南米諸国でも群を抜いていますが、その恩恵を受けているのはごく一部の富裕層。「保健、教育の分野の指標は中南米でも平均以下という状況」(ウマラ陣営の幹部)が続き、今も国民の3分の1は貧困状態といいます。

 こうした中で、「国民生活の改善が伴わない経済成長は意味がない」「国民すべてに経済成長の恩恵がとどく経済モデルを」と語るウマラ氏の訴えは、多くの有権者の心をつかんだといえます。

 フジモリ候補も、貧富の格差の問題を重視して、極貧層への支援金支給などを公約。父親のフジモリ政権時代と同じような、貧困地域での学校建設や食料支給も強調し、貧困層の一部には歓迎されました。しかし、多くの国民には、新自由主義政策の基本は変えないというフジモリ氏の主張は魅力的には映りませんでした。

 富裕層や財界は、決選投票で一致してフジモリ氏を支援。その一方で、ウマラ氏が勝てば「経済成長が止まって、生活も悪化する」など、ウマラ氏への攻撃を強めました。投票日直前には、ウマラ氏の顔写真入りで、「私たちは外国製品の輸入に反対。国境を閉鎖します」などと書いた出どころ不明の謀略ビラも出回りました。しかし、こうした不安や恐怖をあおる作戦も、実体験を通じて経済モデルの「変化」を願っていた国民には決定的な動揺を与えることはできませんでした。

 ウマラ氏が大統領選で勝利したとしても、国会議席では、少数与党という困難も抱えています。公約実現のため、ウマラ氏と与党勢力の真価が問われるのはまさにこれからです。(リマ=菅原啓)


 ペルー 1821年にスペインから独立。人口約2950万人。先住民が45%、先住民と白人との混血が37%を占めます。面積は約129万平方キロ(日本の約3・4倍)。

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