2011年6月7日(火)「しんぶん赤旗」
ドイツ 原発撤退法案決定
22年までに17基全廃
エネルギー政策を転換へ
福島第1原発事故を受け、原発撤退へのエネルギー政策の転換を目指していたドイツ政府は6日、国内にある原発17基の全廃を柱とする原子力法改正案を閣議決定しました。原発の代替として風力発電などを今まで以上に促進する再生可能エネルギー法案、エネルギー効率の良い送電網を整備する送電網法案なども決定し、上下両院の審議にかけます。福島原発事故後、主要国として初めて脱原発とエネルギー政策の転換へ向かうものです。
欧州ではフランスなどが原発の総点検をするとしながらも原発推進の立場を維持していますが、一方で、スイスがすでに2034年までに原発を廃止する政策を決定。ドイツは労組や環境団体を中心とする脱原発の強い世論の高まりを受け、福島での事故後3カ月というスピードで脱原発政策を打ち出しました。
連立与党は、当初、安全点検のため稼働停止している旧式の原発7基と故障多発の1基の計8基をそのまま廃止し、残る9基は2021年まで運転を続けるという案で合意。9基のうち3基は22年まで稼働を1年延長する選択肢を残しました。
これに対し、メルケル首相と3日に会談した各州首相は、原発撤退から後戻りしない保障として残る9基の原発についての閉鎖に向けたタイムテーブルを示し、段階的に閉鎖する案を提示。メルケル首相はこれを受け入れました。この結果、閉鎖は15年、17年、19年に1基ずつ、21年に3基、22年に3基という行程表になりました。
与党案に比べ、これは、最後の原発閉鎖の時期は変えないものの、3基の原発は段階的に前倒し閉鎖することになります。メルケル首相は3日の記者会見で「後戻りの選択肢はないことが明確になった」と述べていました。
メルケル首相は、昨年、原発の稼働を22年までに停止するとしたシュレーダー前政権の方針を見直し、稼働時期を平均で12年延長することを決定しました。しかし、福島事故後、「起こりえないと考えられた危険も排除できない」「日本で起きたことは世界にとっての転換点だ」と述べ、原発撤退にかじを切りました。
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