2011年6月5日(日)「しんぶん赤旗」
柔道指導者の研修急げ
宮本議員が文科相に質問
子ども110人 事故の犠牲
日本共産党の宮本岳志議員は1日の衆院文部科学委員会で、学校部活などで多発する柔道事故をとりあげました。深刻な実態を示しながら、指導者の役割や事故の背景にある体罰、しごきの問題を高木義明文部科学相にただしました。
|
独立行政法人日本スポーツ振興センターが毎年発行する『学校管理下の死亡・障害事例と事故防止の留意点』をもとに、名古屋大学の内田良准教授が調べたところ、1983年度から2009年度までの27年間で、110人の子どもが柔道事故で命を落としています。さらに、脳障害をはじめ何らかの後遺症を抱える事故が261件も起きていました。この数字には民間の道場などの事故は含まれておらず、公になっていない事故も少なくありません。
こうした実態を示し、現状認識をただした宮本議員にたいして、高木文科相は「事故はあってはならないもの。各学校において、部活も含め、安全の確保は最重要」と答えました。
そして、「今年度は新たに体育活動中の事故防止にかんする調査研究を行い、事故の分析、防止策について検討し、安全確保に努めていきたい」と答弁しました。
宮本議員は、事故を医学的、科学的に解明し、再発防止策をたて、早急にすべての指導者に研修を行うことを求めました。さらに、事故の背景には体罰、しごきの問題があるとして、イギリスの例を紹介しました。
宮本 イギリス柔道連盟では児童を保護するためのガイドラインをつくり、けがをするとわかっていながら技をかけることも、根性をつけるためと繰り返し技をかけることも、勝利の価値を強調しすぎることも、虐待であると定めています。
イギリスでは、指導者になるためには、この研修は必修だということになっています。
そのうえで、宮本議員はスポーツ活動のあり方を正面から問いました。
宮本 柔道などの武道では、スポーツ活動を通して、相手への尊重と共同する精神、公正な規律を尊ぶ態度などを培っていく。そうした精神を指導者らの規範として確立していくことは、スポーツを担うすべての人々の人格、人権を守ることや、これからのわが国のスポーツの発展にとっても必要なことだと考えます。
高木文科相 スポーツ指導者の責務、役割は極めて重要。講習会なども行い、安全確保のための資質を向上させていきたい。人権を侵害するとか、健康、安全を害すとか、こういうことは絶対にあってはならない。
来春に武道必修化
来年4月からは中学校での武道必修化が始まります。しかし柔道事故被害者の会をはじめ、学校現場や親たちからは安全を危ぐする声が相次いでいます。これから、事故が増える夏場に入ってきます。これ以上、子どもの命や健康を損なわないためにも、国や関係団体は事故防止に一刻も早くとりくむべきです。