2011年6月4日(土)「しんぶん赤旗」
被災企業の「二重債務」
国の責任で凍結・減免を
債権買い取り機関が必要
東日本大震災からの復興にとって、被災企業の「二重債務」の解決が急務となっています。(大小島美和子)
岩手、宮城、福島3県に本店を置く19信用金庫(信金)と10信用組合(信組)の中小企業向け貸出残高は約1兆1000億円、8地方銀行の中小企業向け貸出残高は約5兆9000億円です。被災したのは、信金・信組が貸出先とする自己資金力の弱い小・零細企業が大半です。工場などの生産手段を失った企業が事業再生のために新たな融資を受けると、既存の借金との「二重債務」を負うことになります。「既存債務の軽減策がなければ地域の復興は進まない」という声が被災地からあがっています。
三陸海岸に面する岩手県宮古市に本店を置く宮古信金の齋藤浩司理事長は、『金融機関財政事情』誌5月2〜9日号のインタビューで、「(地域)事業者の事業意欲、バイタリティーをうまく引き出せるような公的な支援の仕組みがつくれなければ、この地域は死んでしまう」と語っています。
共産党が提案
日本共産党は「二重債務」を解決するため、「国の責任で債務を『凍結・減免』し、債務の重荷を取り除く」ことを提案しています。そのための債権買い取り機構も一案としてあげています。
重要なのは、まず被災中小業者が過去の借金の返済を凍結できるようにすることです。
企業が、金融機関の返済を滞らせると、金融機関からの新たな融資は受けられません。金融機関側も、長期に返済が滞る貸付先が多数になると、資金が回らなくなります。
枠組み創設を
そこで、必要とされるのが、国が責任をもって金融機関から債権を買い取る公的機関です。
買い取り機関は、債権を買い取ります。買い取りで“身軽になった”金融機関は、被災企業に新たに融資し、再生事業を支援することができます。
買い取り機関は、中小企業の被災状況などに応じ、預かり債権の減額や免除を実施することが必要です。被災企業の負担を軽減し、事業が軌道に乗ったら、その段階で返済を検討します。
それには、返済を凍結した期間の利子を補てんし、金融機関による長期・低利の融資を実現するよう支援することも必要です。
青森県商工会連合会の林光男会長も5月25日衆院復興特別委員会で、「被災債権の国または日銀、あるいは第三者機関による買い取りスキーム(枠組み)の創設を強く要望している」と陳述しています。