2011年6月3日(金)「しんぶん赤旗」

チリ軍政下 詩人ネルーダ氏毒殺か

追求の動き


 【メキシコ市=菅原啓】南米チリでピノチェト軍政時代(1973〜90年)に死亡したアジェンデ人民連合政権(70〜73年)幹部の死因を改めて追求する動きが相次いでいます。

 チリ共産党は5月31日、党幹部でノーベル文学賞を受賞した詩人パブロ・ネルーダ氏が毒殺された疑いがあるとして、首都サンティアゴの控訴裁判所に告訴状を提出しました。

 ネルーダ氏はピノチェト将軍らによる1973年9月11日のクーデター直後の同月23日、首都サンティアゴ市内の病院で死亡。これまでの公式発表では、死因は前立腺がんの症状悪化のためとされてきました。

 最近になってメキシコの週刊誌『プロセソ』が、ネルーダ氏の運転手マヌエル・アラヤ氏のインタビューを掲載。アラヤ氏は、ネルーダ氏は軍部の指示を受けた医師が注射した後、容体が急変して死亡したと証言しました。

 クーデター発生当時、チリ駐在メキシコ大使だったマルティネス・コルバラ氏は、ネルーダ氏と死亡前日に会見した経験を証言。ネルーダ氏は、落ち着いて話ができ、病室内を問題なく歩ける状態だったとのべています。

 告訴状を提出したチリ共産党のエドゥアルド・コントレラス弁護士は、これらの最近の証言が全体として、ネルーダ氏が病死であったという公式見解を疑わせるものであると指摘しています。

 チリ共産党は、ネルーダ氏がメキシコへの亡命直前に死亡したことから、毒殺は、海外でのクーデター反対の活動阻止を狙った軍部によるものとの見解を明らかにしています。

 チリでは、クーデター当日に大統領府で自殺を遂げたとされてきたアジェンデ元大統領の死因にも疑問がもたれ、同氏の遺体を掘り起こし、再鑑定作業が進められています。また、クーデターに反対したキリスト教民主党のフレイ元大統領やアジェンデ政権のホセ・トア元国防相についても、独裁政権側による毒殺の疑いが提起され、裁判が進行中です。

 チリ共産党のテイリエル議長は、独裁政権による殺害の疑いがあるこれらの事件の真相を明らかにすることは、党としての「責任」であり、「避けることのできない道義的義務だ」と強調しています。





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