2011年6月3日(金)「しんぶん赤旗」

被災地無視の不信任案騒動

無責任ぶり くっきり

政治部長 藤田 健


 鳩山由紀夫前首相が退陣表明してから1年、自民、公明両党などから提出されていた菅内閣不信任案は、2日の衆院本会議で反対多数で否決されました。本会議に先立つ民主党代議士会で、菅直人首相が「一定のめどがついた段階で、若い世代のみなさんに責任を引き継いでいただきたい」と発言したことで、民主党内での造反を食い止めました。

 「確固たる展望がない」(谷垣禎一自民党総裁)まま、政局の主導権を握りたいという思惑だけの党略的で無責任な内閣不信任案は、「被災地を無視するのか」という怒りの前に通りませんでした。しかし、菅内閣が「信任」されたかといえばそうではありません。首相の震災・原発対応への国民の不満と怒りはおさまっていません。直近の世論調査でも震災対応で53%、原発対応では74%が「評価しない」でした。

 首相発言も、「退陣表明」とは受け取れません。「一定のめどがつくまで責任を果たさせてほしい」とものべていますが、「一定のめど」がつくまで、首相が何をやっていくのかが厳しく問われます。

「責任」の中身

 不信任案否決と同じ日、菅政権は「社会保障集中検討会議」を開き、消費税を2015年までに10%とし、その後際限ない増税に道を開く方針で合意。米軍基地問題では、5月26日の日米首脳会談で沖縄・名護市辺野古への新基地建設を柱とする日米合意について「ぜひ進展させたい」と約束し、日本の経済主権を米国に引き渡す環太平洋連携協定(TPP)参加も「早期に判断したい」と表明しました。こうした悪政推進の「責任」を果たそうというのなら、許されません。

 大震災、原発事故対応では、果たすべき責任を果たそうとしていません。被災地から「希望ある施策を一刻も早く」との叫びが届いているのに、2次補正予算案はいつ出すのかいまだに明確にしていません。復興増税や大企業参入の「復興特区」といった「上からの復興プラン」を議論している復興構想会議の結論を待って考えるという姿勢です。

 原発事故収束の見通しも示せず、対応も自ら「以前と異なる発表、訂正がいくつもあった」と認めるお粗末さです。浜岡原発停止は要請したものの、他の原発再稼働は容認、原発をエネルギー政策の4本柱の一つに位置づけるなど、原発からの脱却を決断できません。

党略的な思惑

 一方で、被災地、被災者の苦境をよそにした、自公両党の党略的で無責任な対応も際立ちました。そもそも不信任案提出自体、不可解でした。提出直前の党首討論は、首相が「原子力を否定するものではない」といえば、谷垣氏は「(原発は)必然の政策だった」といい、消費税増税でも首相が「政府案の協議に乗るか」と問えば、谷垣氏が「私どもはすでに(増税の)ルビコンを渡っている」と応じるという具合。原発推進でも消費税増税でも“響きあう”中身でした。しかも、同日、復興基本法案で、民主・自民・公明の3党は修正合意していたのです。

 それでなぜ、不信任案なのか。結局、「あなた(菅首相)がおやめになれば、いくらでも党派を超えて集まれる」(谷垣氏)というように、「菅おろし」で保守「大連立」に向かおうという党略的思惑だけだったのです。

 日本共産党が、大震災、原発事故という「国難」ともいうべき事態のもとで、こうした党略的で無責任な自公両党の策動に手を貸すことができないことも、菅内閣を信任できないことも明らかで、棄権という態度は当然でした。

政治の役割は

 日刊スポーツのコラム(5月28日付)は、日本共産党の不破哲三社研所長の「『科学の目』で原発災害を考える」について「政府関係者たちは一読すべきだ。政治のなすべき役割がよく分かる」と書きました。いま、大震災、原発事故のもとで、被災者の立場に立って生活基盤の回復に責任を持つ、「安全神話」と決別し原発からの脱却を決断する―このシンプルな立場にこそ、いま政治のなすべきことが示されています。そして、この立場に立っている政党が日本共産党だけだということも、今回の事態を通じて浮き彫りになりました。





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