2011年6月3日(金)「しんぶん赤旗」

際限なき消費増税に道

政府検討会議「15年までに10%」


 政府の「社会保障改革に関する集中検討会議」(議長・菅直人首相)は2日、「社会保障改革案」を決定し、消費税率を2015年までに2段階で10%に引き上げることを打ち出しました。今年度内に法制化するとしています。

 「改革案」は「将来的には、社会保障給付にかかる公費全体について、消費税収を主たる財源」とすると明記。年金、医療、介護に少子化対策を加えて「社会保障4経費」とし、基本的に消費税でまかなうとしました。社会保障費を理由に際限のない消費税増税の道に踏み込むものです。

 集中検討会議が同日発表した試算によれば、25年の社会保障の公費負担は61・3兆円です。全額消費税でまかなうとすれば税率は25%近くになります。

 民主党政権は、「連立政権合意」(09年9月)で4年間は消費税を上げないとしていました。与謝野馨担当相は会議後の会見で「13年9月までは、法律はつくっても税が上がることはない」とのべました。

 「改革案」は社会保障について、「自立・自助を国民相互の共助・連帯」で支えるのが「基本」と強調。消費税増税を社会保障制度の「安定・強化」につなげるとしながら、年金支給開始年齢の引き上げや医療費の自己負担引き上げ、保育への民間参入促進など、社会保障給付削減と国の役割の大幅後退の方向を示しています。


解説

社会保障「改革」案 とりつくろいに躍起

 政府が「集中検討会議」に提示した「社会保障改革案」は、「社会保障機能強化」というみせかけとは裏腹に、際限のない消費税増税と社会保障切り捨てを同時に押し付ける国民大負担増計画となっています。

 特に、将来的に社会保障にかかる「公費全体について、消費税収を主たる財源」にすると明記したことは重大です。政府試算では2015年度に社会保障にかかる公費(国・地方)は47・4兆円。消費税を10%に上げても25兆円程度の税収にしかならず、22兆円強の不足です。これでは国民はとめどない消費税増税と社会保障削減という二重苦に追い込まれることになります。

 低所得の人ほど負担率の重い消費税を主財源に据えることは、「能力に応じて負担し必要に応じて給付する」という社会保障の原則を根こそぎ破壊し、貧困と格差をいっそう拡大させる政策です。

 そのため「改革」案は、社会保障削減の方向を隠し、とりつくろうことに躍起になっています。

 そのことは▽患者負担に上限を設ける高額療養費制度の拡充▽低年金者への加算―など、国民の要求を一定反映した施策に表れています。しかしそれらも▽外来患者の窓口負担に100円の定額負担上乗せ▽一定所得以上の高齢者の年金額削減―などの切り捨て策と抱き合わせです。「低所得者対策の強化」をいうそばから、生活保護改悪のたくらみを盛り込むという、欺まん的なものです。

 「改革」案は、消費税増税を合理化するために社会保障の「機能強化」を強調。15年度の公費負担は2・7兆円増になると説明しました。しかしこの計算もごまかしです。

 国民への負担増・給付減による「効率化」額には、生活保護の改悪、「マクロ経済スライド」強化による年金額削減などの重要項目が含まれていません。15年度以降の実施検討を明示した年金の支給年齢引き上げ(68〜70歳に)では1・5兆〜2・5兆円もの公費が削減されます。

 民主党政権が自公政権と同じ消費税増税・社会保障切り捨て路線に行き着く根底には、財界いいなり政治と決別できない弱点があります。労働者を犠牲にしたリストラや過大な減税の恩恵で富をため込む大企業と大資産家に応分の負担を求めるべきです。それによって社会保障を拡充する方向でこそ、国民の不安を解消できます。(杉本恒如)


社会保障案

 【医療】 

 ・70〜74歳の窓口負担 1割→2割

 ・受診時の定額負担導入、その規模に応じた高額療養費の拡充

 ・市販品類似医薬品の患者負担引き上げ

 ・診療報酬見直しによる入院日数短縮、外来受診の抑制

  【介護】 

 ・要介護認定者数の削減

 【年金】 

 ・支給開始年齢引き上げ 65歳→68〜70歳

 ・物価下落時のマクロ経済スライドによる年金額引き下げ

 ・年収1千万円以上の人の基礎年金削減とセットで65万円未満の人への加算、受給資格期間の短縮

 【その他】 

 ・制度横断的な世帯負担の上限制度

 ・短時間労働者への厚生年金・健康保険の適用拡大





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