2011年6月2日(木)「しんぶん赤旗」

きょうの潮流


 幼い顔立ちに、ふくらんだおなか。どっしりとした下半身。縄文時代の人々は、子を宿す裸の女性の土偶もつくりました▼生命の力をたたえ、子孫の繁栄への願いをこめたのでしょう。人類は古くから、女性の裸体を描いてきました。現代につながる裸体美術の起こりを、ミロのビーナス像に代表される古代ギリシャに求める人もいます▼先ごろ亡くなった、美術評論家の瀬木慎一さんが書いています。「古代ギリシャのあの優美な裸体彫刻は、人間が自らを動物とはっきり区別しながら、しかもなお、豊富な自然性を自分のうちに確保したすばらしい先例といえる」(『名画はなぜ心を打つか』)▼以来、賛否両論を巻き起こしながら、多くの裸体の絵や彫刻が生まれました。いま、戦没画学生慰霊美術館「無言館」の裸体画をみると、そんな歴史をふり返ってしまいます。かつて、これほど切実な気持ちのこもった裸体画がどれだけあったのだろうか、と▼出征の直前まで恋人をモデルに筆をとった日高安典さんが、「生きて帰ったら必ず続きを描く」といい残していった、彼女の慎ましい立ち姿の絵。中村萬平さんが、立派な子を産んでくれといって描いた、大胆な姿勢の妻の座像。佐久間修さんが初めて愛妻の初々しい裸体を描いた、横たわる彼女の素描…▼いずれも、胸をしめつけないではおきません。いま、記録映画「戦没画学生慰霊美術館 無言館」が上映されています。絵に刻まれた魂の遺言を、後の世代に伝えようとする映画です。





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