2011年6月1日(水)「しんぶん赤旗」

主張

梅雨本番

被災地の被害防ぐ万全の策を


 大型の台風2号が各地に被害をもたらしましたが、例年より早い梅雨入りによる大雨や洪水も、いよいよこれから懸念されます。

 とりわけ心配されるのが、東日本大震災の被災地です。大地震で地盤が沈下し、崩れた堤防やがけ崩れの復旧が進まない中で大雨に見舞われれば、甚大な被害が予想されます。震災と原発事故で苦しむ被災者が大雨などの被害で追い打ちをかけられるような事態は、絶対に避けなければなりません。

地盤の沈下や堤防の破壊

 実際、台風2号から変わった温帯低気圧の影響でも、被災地は大雨による道路の冠水、土砂崩れなどの被害を受けました。これ以上繰り返すべきではありません。危険が指摘されているのに応急工事や復旧工事など対策が間に合わないために被害を受けるのは、まさに“人災”そのものです。

 問題は山積しています。東日本大震災で大きな被害を受けた東北地方の太平洋岸では、海沿いや川沿いの地域を中心に地盤が数十センチも沈下し、ふだんでも潮の満ち干や降水で、浸水を繰り返しているところが少なくありません。梅雨に入り大雨が降れば、それこそ床上・床下などの浸水で被害がでることが懸念されます。万一の場合にそなえて浸水を防ぐ土のうを準備するなど、大雨に向けた対策が急いで求められます。

 地震や津波で堤防が破壊され、海の水や川の水が浸水しやすくなっているところもあります。内陸部でも、地盤の液状化などで堤防の高さが通常より低くなっているところがあります。岩手、宮城、福島の被災3県だけでも、応急工事が終わっていない堤防が40カ所近く残っているといいます。復旧工事や緊急の補強工事を急ぐことが不可欠です。

 地震でがけが崩れたり、もろくなったりしている所への対策も求められます。被災者が暮らす避難所でさえ、地滑りやがけ崩れの危険がある「土砂災害危険箇所」に隣接しているところがあります。岩手、宮城、福島の3県だけでも200カ所以上にのぼるといいます。うち1割近くが、緊急工事の必要な状態です。

 いぜん事態収束のめどが立たない福島第1原発への影響も心配です。原子炉や燃料プールがむき出しになっており、雨が続けば放射性物質が流れ出す恐れがあります。放射性物質に汚染された水の処理が大問題になっており、雨水が流れ込めば処理が必要な汚染水の量がさらに増えることになります。

 事故の収束に全力をあげるとともに、事態を深刻化させないよう雨や浸水への対策も必要です。

被災者の生活再建こそ

 気象庁の長期予報では、ことしの東北地方は6、7月には平年と同じぐらい曇りや雨の日が多く、8月は平年より曇りや雨の日が多いといいます。地震や津波で住宅などの生活基盤が破壊されている被災地の住民にとって、ただでさえじめじめとした天候や長雨はこたえます。被災者が健康を損なったりしないよう、感染症や食中毒の予防にも配慮が求められます。

 震災から3カ月近くたつのに被災者が危険におびえながら暮らさねばならないこと自体、異常です。被災者の新たな被害を防ぐ対策を急ぐ必要があります。被災者の人間らしい生活を再建し、復興を支えることが政府の責任です。





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