2011年5月30日(月)「しんぶん赤旗」

列島だより

中学校給食

やっと実現 充実さらに


 「食育」を重視する学校給食法が施行されて2年、小学校の完全給食は、全国で99%を超えていますが、中学校は、同81.6%。大きく遅れている府県があります。育ち盛りの生徒が空腹をがまんしなくていいように関係者の粘り強い運動があります。完全給食が実現した兵庫県播磨町の中西美保子元町議と神奈川県相模原市の竹腰早苗市議のリポートです。


「温かいのがうれしい」

兵庫県播磨町

 兵庫県播磨町の二つの中学校で昨年(2010年)3学期から全員給食が始まりました。日本共産党町議団は30年前から議会で取り上げ、2000年と09年、保護者と署名活動を進めてきました。

□   ■

 「愛情弁当」でいいじゃないかという理由で実現できませんでした。当時の教育長から「今後中学校給食の質問はしないでいただきたい」と答弁されたこともありましたが、負けずに繰り返し質問しました。

 その中で、中学校給食を求める議員が増え、06年には、中学校給食実現を公約に掲げた現町長が初当選。実施に必要な設備を予算案に計上しましたが、弁当との選択制を主張する議員の反対で再三削除されました。

 保護者らは09年春、「中学校給食を願う親の会」を結成して、請願署名を人口の2割にあたる6240人分を集め、請願は全員一致で採択されました。こうして、給食が実施されることになりました。

 「中学校給食が始まってどう?」。学校帰りの中学生に聞きました。

 3年生のM君は「うれしい。看護師のお母さんが夜勤のとき、コンビニでパンを買っていた。お母さんの負担が少なくなっている」と言います。

 K君は、「温かいのがうれしい。仕事をしているお母さんがゆっくり眠れている」と。親を気遣う優しさが感じられました。

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 町教育委員会は、今春、給食の充実に向けて2校の全生徒約1000人と保護者、教師を対象にアンケート調査を実施しました。「大変ありがたい」「感謝している」など、給食実施を喜ぶ声がたくさん寄せられています。私も4月末に議員を勇退し、新人に引き継ぎましたが、今後とも生徒や保護者の声をよく受けとめながら運動をすすめていきたいと考えています。(兵庫県播磨町元町議・中西美保子)

市民の悲願 合併中に実現

神奈川県相模原市

 昨年政令市になった相模原市の中学校で、昨年11月から給食未実施の30校のうち15校で、弁当と併用のデリバリー方式(業者が調理・配送)の完全給食が始まりました。残り15校も今秋実施されます。

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 旧城山町、旧津久井町の区域7校では、合併前から給食センター方式で実施しています。

 旧相模原市域では、02年9月から弁当持参を基本として、持ってこられない生徒には注文に応じて業者の弁当を配送するという方式がとられてきました。

 このため、完全給食を願う市民と日本共産党市議団は長年、力を合わせて運動をすすめてきました。1998年に「学校給食を考える会」が発足し、中学校の完全給食を求める本格的な運動が始まりました。

 04年2月、「相模原市中学校完全給食」の早期実施を求める署名をスタートさせ、11月に3347人の署名を添えて市長と市議会に陳情しました。議会は賛成少数で陳情を不採択にしました。

 市は、「親の愛情弁当論」や「財政が厳しい」「食事量の男女差、嗜好(しこう)の面の違い」といった言い訳を並べ、実施を拒んできました。

 しかし、旧相模原市と城山、津久井、藤野、相模湖の4町が合併協議をすすめるなかで、ついに合併協定書に中学校給食実施について検討することが明記され、具体化が図られました(合併は07年3月)。

 日本共産党市議団は、名古屋市や千葉県船橋市を視察し、積極面や問題点を検討してきました。

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 相模原市の中学校給食実施方針についてのパブリックコメント(意見公募)には、自校調理方式を望む声も多く寄せられました。デリバリー方式の給食は、市の栄養士が献立を作成し、食材を発注。民間事業者の調理場で給食をつくって各学校に配送します。

 党市議団は、生徒の健康とともに、給食を通して地域の産業を理解してもらうことも重要と考え、地場の農産物を給食に使用することを求めてきました。市内3カ所の卸売市場から地場農産物を供給しています。ひき続き市民のみなさんとともに考え、運動し、よりよい給食をめざします。(神奈川県相模原市議・竹腰早苗)


●給食の種類

 文部科学省は学校給食法施行規則で、パンか米飯などの主食・ミルク・おかずの三つがそろった給食を「完全給食」、ミルクとおかずだけの給食を「補食給食」、ミルクだけを「ミルク給食」と規定しています。


●共産党はこう考えます

 安全で豊かな学校給食のために、地産地消、自校方式、直営方式などをすすめます。中学校給食、高校給食をひろげます。学校給食費の未払いをすべて保護者の責任にするのではなく、無償化の方向を検討するとともに、生活の実態に応じて、必要な免除措置をすすめるようにします。 (2010年参院選政策から)


30都道県が90%を超す

都道府県別の状況

 完全給食の都道府県別実施状況をみると、90%を超すのは30都道県あり、うち100%は千葉、愛知、富山の3県です。

 一方、大阪府7・7%、神奈川16・1%、滋賀46・0%、兵庫50・7%など遅れている府県もあります。(2009年、文部科学省調査)


都道府県別公立
中学校給食実施率

都道府県  %
北海道  96.1
青 森  81.7
岩 手  79.6
宮 城  92.2
秋 田  99.2
山 形  78.2
福 島  95.8
茨 城  98.7
栃 木  98.2
群 馬  98.3
埼 玉  99.5
千 葉  100.0
東 京  96.0
神奈川  16.1
新 潟  96.7
富 山  100.0
石 川  96.0
福 井  94.9
山 梨  95.8
長 野  99.0
岐 阜  99.5
静 岡  96.6
愛 知  100.0
三 重  53.6
滋 賀  46.0
京 都  61.7
大 阪   7.7
兵 庫  50.7
奈 良  69.2
和歌山  55.6
鳥 取  75.8
島 根  91.3
岡 山  97.0
広 島  62.4
山 口  93.8
徳 島  98.9
香 川  97.3
愛 媛  99.3
高 知  59.8
福 岡  64.0
佐 賀  73.2
長 崎  82.0
熊 本  98.4
大 分  98.5
宮 崎  99.3
鹿児島  99.2
沖 縄  99.4
全国平均 81.6
2009年5月1日現在(文科省調査)





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