2011年5月30日(月)「しんぶん赤旗」
主張
被災地の産業復興
再出発に希望持てる施策を
東日本大震災の被災地の暮らしと経済を支えてきた水産業、農業、商工業、中小企業などの産業の復興なくして被災者の生活基盤の回復もありません。
衆院の復興特別委員会の参考人質疑(25日)で、被災地の農協や漁協、商工会などの団体の代表からは、政府に迅速な対応を求める声が相次ぎました。
せめてゼロからの出発に
船や工場、店舗、機械など借金をしてそろえてきた設備が一瞬にして奪われました。気力を奮い起こしてもう一度立ち上がろうとしても、新たに設備をととのえようとすれば、残った借金に加えて新たな借金を抱える「二重ローン」状態に陥ります。
青森県の商工会議所連合会の林光男会長は、仮設店舗などの借り入れを含めると「三重債務の人もいる」と指摘しました。
各団体の代表が口々に訴えたように、事業の再出発のためにはこの問題の解決が不可欠です。マイナスからではなく、せめてゼロからのスタートが切れるように、二重三重のローンの重荷を取り除くことが急がれます。
林さんや岩手県の農協中央会の長澤壽一会長は、国などによる債権買い取りの検討を求めました。被災した事業者の債務を国が金融機関から買い取る震災復興支援機構をつくり、被災状況に応じて事業者の債務を減免するなど方法はあります。何より政府が責任を持って債務の「凍結・免除」を実現する姿勢を速やかに打ち出す必要があります。
福島県の農協中央会の庄條徳一会長は「原発事故は人災であり、いかなる『風評被害』をも補償すべきだ」とのべました。東電任せではなく、政府として責任を持って原発事故の収束への戦略と展望を示すとともに、すべての被害に全面的な賠償を進める姿勢を明確にする必要があります。
茨城県の農協中央会の成田治彦常務理事は、東電に損害賠償を請求しているが「何ら音沙汰がない」といいます。成田さんが求めるように、直ちに国の責任で仮払いを実現すべきです。
村井嘉浩宮城県知事が提案している、漁港の集約化と株式会社の参入など漁業者の意思を無視した“上からの復興”の押し付けには厳しい批判が示されました。宮城県漁協の経営管理委員会の木村稔会長は、「漁業者は全員一致で反対だ」と表明しました。
関税の撤廃で日本の農林漁業に壊滅的な打撃を与える環太平洋連携協定(TPP)に反対する発言が、青森や宮城の農協中央会から出されました。大規模な2次補正予算を早急にまとめてほしいという切実な声も上がっています。
被災者の立場に立って
復旧・復興にあたって大事なのは、被災者の生活再建を最優先に住民合意で進めることであり、一番やってはならないことは上からの復興計画の押し付けです。被災者一人ひとりの再出発のための事業でなければ、本当の意味での復興は図れません。
支援策が遅すぎるという被災地の悲痛な抗議を、民主党政権はどう受け止めたのでしょうか。被災者の立場で生活基盤の回復に責任を果たす真剣な姿勢に立つこと、被災者が希望の持てるメッセージと施策を直ちに打ち出すことが切実に求められます。