2011年5月29日(日)「しんぶん赤旗」
主張
G8サミット
中東の民主化に干渉するな
フランス・ドービルで開かれていた主要8カ国首脳会議(G8サミット)は、世界で最も激動する中東・北アフリカ地域に強い関心を示し、この地域の民主化を支援していく姿勢を鮮明にしました。
チュニジア、エジプトから中東の広い地域に瞬く間に広がった民主化の流れのなか、これらの国々への援助を強めることは重要です。しかし、G8の動きはこの地域への米欧の影響力を確保したいという意図に彩られています。中東では歴史的に列強の干渉が混乱を拡大させてきました。大国が干渉を強めることは、民主化の流れにも困難をもたらします。
国連憲章にも違反
干渉の性格をもっとも強く示しているのが、北大西洋条約機構(NATO)がリビアで続けているカダフィ政権への軍事攻撃です。サミット宣言はリビアでの市民への暴力停止を要求するとしているものの、米英仏などは攻撃ヘリを投入するなど軍事作戦を強め、カダフィ大佐に公然と退陣を迫っています。いかに問題のある体制であっても、その転換を外部から軍事力で強制することは国連憲章の精神に反し、イラクへの侵略戦争の歴史的な誤りを重ねるものにほかなりません。
サミットは民主化を進める国ぐにを支援する「ドービル・パートナーシップ(連携)」を立ち上げました。国際機関を使った経済支援が主ですが、それと引き換えに「自由と民主主義」の名の下に米欧型の政治的、経済的モデルを押し付けるものになっていることは見過ごせません。
中東では従来抑圧されてきたイスラム主義が民主化の過程で影響力を拡大するなどの動きがあります。米欧の民主主義モデルをあてはめて誘導しようとするのは、混乱を持ち込む危険な姿勢です。民主化の流れを受けた中東各国が、政治的、経済的にどういう国づくりをしていくかは、それぞれの国民の主権に属する問題で、外部から干渉すべきではありません。
サミット宣言はパレスチナ問題について、パレスチナ人の国家樹立とイスラエルとの共存の方向を示したものの、和平交渉の最大の障害であるイスラエル入植地問題はじめ、和平に向けた具体的な提起はみられません。
オバマ米大統領は19日の演説でイスラエルとパレスチナの国境線として1967年以前の境界線をあげましたが、イスラエルが反発するなか、入植地からの完全徹退を求めたものでないと改めて表明しました。サミット宣言も及び腰が目立つもので、パレスチナ問題の解決に役立つとはいえません。
米国べったりの菅首相
宣言は、米軍がテロ容疑者ビンラディンを殺害したことを、「テロとのたたかいにおける重要な前進」と評価しています。殺害は「法に基づく裁き」という世界的に確立された原則に反し、テロ根絶の努力に逆行する危険なもので、宣言はこの点でも軍事力優先の姿勢を示しています。
宣言に盛り込まれた政策は、オバマ大統領が示した米国の中東政策を下敷きにしたものです。日本は小泉自公政権下でイラクに自衛隊を派遣し、中東でも米国べったりの姿勢を示しました。菅直人首相がその轍(てつ)を踏んでいることは、日本と中東諸国、世界との友好関係にとってマイナスです。