2011年5月29日(日)「しんぶん赤旗」
きょうの潮流
先ごろ、前進座の80周年記念公演で歌舞伎をみました。主演の嵐圭史さんらが花道で見得(みえ)をきると、拍手喝采でした▼観客席をつらぬき、役者が出たり退場したりする花道。もともと、客が役者に花を贈るための通路でした。転じて、人生のはなばなしいありさまをいいます。政界では、たとえば「サミットを花道に」▼サミットは、主要8カ国(G8)首脳会議です。はなやかな外交の場で花をもたせ、終われば首相の座から退場を。しかし、G8の注目度が落ちるにつれ、花道を飾るにはさびしい会議になりました▼G8以外の中国・インド・ブラジルなどが経済力・発言力をつけてきたからだけではありません。G8が、まとまりを欠くとともに、進歩する世界の中で影を薄くしています。今年のフランス・ドービル・サミットもそうです▼福島原発の事故の後、G8中ドイツとイタリアは脱原発へ。が、アメリカや日本・フランスは事故の重みをまともに受け止めません。エジプトやチュニジアの民主化を「アラブの春」とたたえますが、主役は各国の人民です。G8は、中東を影響下につなぎとめようと干渉し、混乱を持ち込む日陰の存在にすぎません▼エジプトは、サミットと時を同じくして開かれた非同盟諸国外相会議で、期限を切って核廃絶の実現めざす声明づくりにつとめました。花道で見得をきっても拍手少ないG8。インドを代表する新聞のG8報道は、おめでたがうわさの、サルコジ仏大統領の妻の写真だけだったそうです。