2011年5月28日(土)「しんぶん赤旗」

主張

菅首相サミット発言

世界も日本も「安心」できない


 菅直人首相が、フランスのドービルで開かれた主要8カ国首脳会議(G8サミット)で冒頭発言し、東京電力福島第1原発の事故について「遺憾」の意を示すとともに、エネルギー基本計画を見直し、原発の安全性の向上に取り組むなどの考えをうちだしました。

 東電福島原発の重大事故が国際社会の不安をかきたてているのは、原発問題がサミットの重要議題となったことからも明白です。それを「遺憾」の一言ですませ、見直しが迫られている原発を将来も推進する方針を示した菅首相の発言が、世界にも日本にも安心をもたらさないのは明らかです。

新たな「安全神話」

 福島原発の事故は発生から3カ月近くにもなるのに収束のめどさえたっておらず、海にも空にも放射性物質の拡散が続いています。日本国内で原発周辺の10万人以上もの人たちが避難を余儀なくされ、農水産物の生産や出荷、地域経済などに深刻な被害を与えているだけでなく、世界的にも、大気や海洋の汚染が続いています。

 菅首相がサミットの発言でも、直前に開かれた経済協力開発機構(OECD)での演説でも、「事態は着実に安定してきている」などと楽観的な見通しを口にしたのは、「安全神話」にとらわれて原発を推進し、重大な事故を引き起こした、当事者の政府としての責任を真剣に反省する姿勢に欠けます。

 東電福島原発の事故を東電だけでなく政府の責任と認めるなら、何はさておいても事態収束のめどと対策を政府の責任で示すべきです。それも行わず、収束は東電任せで、自らは「遺憾」の一言で済まそうというのは、人災への反省がないといわれて当然です。

 しかもその首相が、エネルギー政策の見直しにふれながら「最高水準の原子力安全を目指して取り組む」などと今後も原発を推進する姿勢を露骨に示すのでは、それこそ新たな「安全神話」を振りまくつもりかと、世界でも日本でも指弾されても当たり前です。

 今回の東電福島原発の事故を機に、世界でも日本でも、原発からの撤退を求める声が高まっています。サミット参加国の中でも、ドイツやイタリアが原発から撤退する方向を再確認し、そうした動きは各国にも広がっています。首相が、「原子力安全に関する国際会議を開催したい」といっても、「安全神話」にとりつかれた提案だと、さめた目で受け止められても仕方がありません。それこそ、原発の安全性を問い直している世界の流れにもそむくものです。

 首相は原子力と化石燃料に加え、「自然エネルギー」と「省エネルギー」をエネルギー政策の柱にするといいましたが、太陽光などの活用を大幅に進める具体的裏づけはありません。原発最優先のエネルギー基本計画を「白紙に戻して議論をする」といいながら、結局はそれもあいまいにして原発依存を続けるというのでは、国民の信頼を得られるはずがありません。

原発ゼロの工程表を

 国民の安全を守るうえで、原発推進から撤退への転換こそがいま求められています。

 菅首相が東電福島原発事故の責任を痛感しているというのなら、原発からの撤退を政治的に決断した上で、原発をゼロにする期限を定めたプログラムを国民に示し、実行することです。





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