2011年5月27日(金)「しんぶん赤旗」
がれき処理 自治体不安
“財政は国が全責任を”
宮城・石巻市では100年分
東日本大震災の津波で大量に発生した災害廃棄物(がれき・汚泥など)の早期の処理は、復興に欠かせない大きな課題となっています。被災した市町村では、独力での処理には限界があるとして、国の全面的で確実な支援を求めています。 (高橋拓丸)
政府は今回の大震災で、災害廃棄物の撤去費用ほぼ全額を国の負担とする特例措置をとっています。方針決定より以前に、被災した個人や業者が廃棄物処理業者に依頼して撤去していた場合も、これを負担します。日本共産党の大門実紀史参院議員の要求がみのったものです。
しかし、災害廃棄物処理に対する国の補助率は90%近く(通常の災害では50%)で、残りの市町村負担分は災害対策債という地方債を発行することになっています。県に市町村が処理を委託する場合は、県が市町村に対して処理費用を請求します。
政府は、最終的に元利償還金すべてを交付税で手当てするとしています。それまで財政的に乗り切れるのか、最終的に市町村の負担が残らないのか、たとえ1%負担でも被災自治体としては多額の費用となるだけに、不安を感じている自治体は少なくありません。
宮城県石巻市環境対策課の担当者は「過去、日本で経験したことのないほどの自然災害です。市や県の予算で対応できるレベルではありません。とにかく国には、100%まで責任もって補助をお願いします」と強く要望します。
大半手つかず
石巻市では、616・3万トン(環境省調べ)という、同市の通常時の100年分にものぼる災害廃棄物が出ました。岩手県の全量、宮城県内の3分の1を超える量にあたります。
もっとも大きな被害を受けた同市沿岸部では現在も、基礎から流された建造物の残骸や車両など、積み重ねられた廃棄物がどこまでも続き、潮と油のまざった臭いが漂っています。廃棄物を運び集める1次仮置き場への移動もまだ大部分が手つかずの状態。比較的早く居住できるまでに復旧が可能な地域の作業を、優先的に進めなければならないためです。
1次仮置き場の用地も不足しています。「仮置き場として使用できる面積を持ち、交通の便もいい平地は、同時に仮設住宅の建設に適した土地でもあり、そちらの建設が優先されます」と同市の担当者は言います。粉砕処理などを行う2次仮置き場の確保は県が担当していますが、1次よりさらに広い用地が必要となり、難航しています。
また、今も警察・自衛隊による遺体の捜索が続いており、撤去作業に入れない地区も残っています。地区一帯が全壊しているため、捜索の済んだ、がれきを一時的によける作業も困難な状況にあり、捜索が遅れています。市は、警察と連携を深め迅速に捜索活動ができるよう協議を進めています。
せめて更地に
今後は倒壊・損壊した家屋の解体や撤去も進み、廃棄物はさらに増加するとみられています。
同市沿岸部の南浜町で、変わり果てた町の様子を撮影していた男性(56)は、切々とこう話しました。「ここに私の家があったはずですが、目印もないので今となっては本当にここだったのかも少し怪しいです。このままではこの先どうするかも考えられないので、早いうちにせめて更地くらいには戻ってほしい」
災害対策債 災害応急対策等の財源のため、被災自治体が発行する地方債。発行には一定の要件が必要ですが、3月17日に災害対策基本法が一部改正されたことにより、災害救助法が適用される自治体なら発行できるようになりました。