2011年5月26日(木)「しんぶん赤旗」
主張
IMF専務理事ポスト
世界の変化を踏まえた改革を
国際通貨基金(IMF)が、ストロスカーン容疑者の専務理事辞任に伴い、後任の選出を6月中の予定で進めています。経過の異例さを別に、今回の選出でIMFは世界経済の変化に見合った改革ができるかが注目されています。
崩壊する米経済覇権
IMFトップの専務理事は欧州出身者が、筆頭副専務理事は米国出身者が一貫して占めてきました。この「慣習」は、米経済をモデルとする「グローバル化」を世界に押し付けたIMF路線を支える柱の一つです。「リーマン・ショック」で米経済モデルが破綻したもとで、IMFもその責任を問われています。あしき「慣習」はいまこそ打破すべきです。
IMFは声明で、「慣習」に沿った理事会のコンセンサス(一致)という従来の選出方法から、多数決を基本に打ち出しました。「どの加盟国出身者」であれ人物本位で選ばれるとも明記しています。当然とみえるこの方針には、3年前に発足した20カ国・地域(G20)を舞台に、途上国などがIMFに要求した透明性確保などの改革が一定反映しています。
IMFは、対外債務を抱えた国への融資条件や加盟国の経済政策への監視を通じて、緊縮政策や税制改悪、金融自由化、規制撤廃、民営化など、弱肉強食の新自由主義を押し付けてきました。「ワシントン・コンセンサス」とよばれたこの路線は、中南米などで実行に移され、各国の国民に犠牲を強いてきました。
その誤りは、1997年の東アジア通貨危機で各国経済の混乱を拡大させたことで明らかとなり、IMF改革が広く叫ばれるようになりました。2008年の米国発の世界金融・経済危機はその流れを決定的にし、G20は「ワシントン・コンセンサス」の「終えん」を宣告しました。
米国の経済覇権が崩壊しつつあることは、25年にはドル一極体制が終わり、ドル、ユーロとならんで人民元も基軸通貨になるとの見通しを、世界銀行が示したことにも表れています。ドルを基軸通貨としてきたIMFにとって、抜本改革は一刻の猶予もありません。
IMFの非民主的性格の土台となっている出資比率に基づく投票権制度は、若干の手直し後も、重要問題では米国に拒否権を保障するなど、依然変わっていません。欧州は35・6%と大きな投票権を持ち、専務理事の選出が多数決になっても、欧州がまとまりさえすればきわめて有利であることに変わりありません。16・8%を持つ米国が支持すれば、「多数」を得られます。専務理事の選出問題も本来、意思決定のあり方の抜本改革を迫るものです。
「欧米の道具」脱却こそ
東南アジアや中南米、アフリカなどの国ぐにも、候補者擁立に動いています。一方、欧州の主要国は欧州出身者に固執し、フランスの現財務相などの名があがっています。IMFはポルトガルへの融資を決めるなど、「ユーロ危機」を抱える欧州にとって重要で、トップのポストは手放せないという身勝手な主張があります。
専務理事は危機を抱える地域から出すべきだという主張も、欧州独占を正当化できません。専務理事の欧州独占の打破は、IMFが欧米の支配の道具から変わるうえで避けられない課題です。
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