2011年5月26日(木)「しんぶん赤旗」
圧力異常、緊急冷却配管が破損か
福島3号機、地震が原因の可能性
福島第1原発(福島県大熊町、双葉町)3号機で、地震翌日に発生した原子炉圧力の異常な低下について、緊急炉心冷却装置(ECCS)の配管破損が原因である可能性が判明しました。東電が24日に公表した解析結果によるもの。東電は、配管破損の原因が地震である可能性を否定しておらず、解析結果が正しければ、国と東電の地震対策の不備が疑われる事態です。
解析によると、破損が疑われるのは、ECCSの一つ「高圧注水系」と呼ばれる冷却装置の配管。
3月11日の地震で外部電源が失われた後、3号機では別の炉心冷却装置「原子炉隔離時冷却系」が起動し、12日昼ごろまで継続的に運転していましたが、何らかの原因で停止しました。
約1時間後、原子炉の水位低下により高圧注水系が起動しましたが、そのころから原子炉の圧力が急低下。高圧注水系が13日午前2時42分に停止するまで低圧状態が継続しましたが、停止すると圧力は元に戻りました。
今回の解析では、高圧注水系の蒸気配管を通じて原子炉格納容器外へ蒸気が漏れたと仮定して計算した結果、異常な低圧状態が再現できました。高圧注水系の停止後に、原子炉水位が低下して炉心温度が上昇し、核燃料の溶融に至ったとみられます。
東電は、解析結果は「仮定をおいて模擬したもの。実際の状況は確認できていない」と説明。配管損傷が顕在化したのは津波後だとしつつ、「地震の影響があったかもしれない」としています。
解説
福島第1原発事故解析
耐震設計問われる事態か
これまで東電は、福島第1原発事故原因について“想定を超える津波”を理由にしてきました。今回の解析結果からは、原子炉が冷却できなくなった原因として、地震の揺れそのもので冷却装置が破損していたことも、疑われる事態となっています。
ECCS(緊急炉心冷却装置)は、緊急時に炉心を冷却するための“最後の綱”ともいうべき存在で、国の耐震設計指針では安全上最も重要な施設と位置づけられています。
今回の地震で3号機は、想定した基準地震動を約15%上回る揺れも観測されており、想定の甘さが問題になっています。それにくわえて、想定を少し上回る程度の揺れで最も重要な施設が壊れるようであれば、耐震設計のあり方の抜本的な見直しが必要です。 (中村秀生)
高圧注水系 原子炉水位が異常に低下したときに、原子炉内に水を補給する装置。原子炉で発生した蒸気でタービンを回すことで駆動しますが、弁の開閉には電源を使います。
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