2011年5月25日(水)「しんぶん赤旗」

あすからG8サミット

「原発の安全」主題に


 フランス北部ドービルで26、27両日、主要8カ国首脳会議(G8サミット)が開かれます。東京電力福島第1原子力発電所の事故が、原発の危険性を世界にまざまざと示したことから、原発の安全問題が主要議題になります。世界経済問題や中東の民主化などについても話し合われます。


首相の対応 各国注視

 菅直人首相はドービル・サミット冒頭、議長のサルコジ仏大統領の要請を受けて発言し、東日本大震災に各国から寄せられた支援に感謝を表明するとともに、原発問題について見解を述べます。

 要請は3月末、サルコジ大統領が訪日した際に行われました。そのときの日仏首脳会談でサルコジ大統領は「今回の(福島原発)事故があっても原子力エネルギーの必要性は疑いない」(共同記者会見)とする一方、課題は「いかに安全性を国際的に高めていくかだ」と強調しました。

 両首脳はサミットで原発の国際的安全基準づくりについて論議することで一致しています。菅首相、サルコジ大統領はサミット開会前日に個別会談して意見交換します。

 菅首相はこれまで、原子力行政の根本的再検討やエネルギー基本計画の白紙見直しを表明。中部電力に浜岡原子力発電所の運転中止を求めました。同時に「安全性をいっそう高める中での活用」を主張し、原発推進の姿勢を変えていません。

 今後、日本の原子力政策をどのような方向に進めるのか、サミットで菅首相が行う説明に世界から関心が集まっています。

 菅首相はフランス滞在中、やはり原発大国の首脳であるオバマ米大統領、メドベージェフ・ロシア大統領とも個別に会談する方向です。特に米国は1955年の日米原子力研究協定以来、日本の原発開発に大きな影響力を維持してきました。日米首脳会談でも日本の原発問題が取り上げられることになりそうです。(山田俊英=経済部)

推進の路線 変わらず

 福島第1原発の事故は、世界にも大きな影響を与えました。いち早く「脱原発」にかじを切り直したドイツの例もありますが、原発先進諸国では安全性基準を強化し、引き続き原発を推進するとの姿勢が大勢。ただ世論の間では不安が増大しており、G8サミットは国際的な安全基準づくりで強いアピールを打ち出したい意向です。

 104基の原子炉が稼働中の米国では、今回の事故を受け、オバマ大統領が安全性について包括的に見直すことを原子力規制委員会(NRC)に要請しました。

 しかし3月末に発表されたエネルギー政策文書「確実で安全なエネルギーの未来のための青写真」は、原発の安全確保に留意するとしながらも、温室効果ガスを排出しない原子力をクリーン・エネルギーの一つと位置づけ、引き続き推進する立場を明確にしました。

 今回議長国を務めるフランスは発電量に占める原発の割合が約80%という「原発大国」であり、原発事故の後もその姿勢に変わりはありません。

 ただ世論はかつての原発容認から大きく変化。事故後に発表された世論調査によると、原発に「不安」を感じる人は56%、今後20〜30年のうちに原発依存度を減らすことを「期待」する人は83%にのぼりました。

 一方、「脱原発」を明確にしたドイツですが、フランスへの配慮もあって、サミットではこの立場を声高に主張することはなさそうです。

 欧州連合(EU)は、今回の事故後、域内の原発の安全性を検証する方針を出したものの、検証する内容で一致できないままサミットを迎えました。G8が打ち出す原発の安全基準がどこまで世論を納得させられるかは不透明です。(ロンドン=小玉純一)





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