2011年5月24日(火)「しんぶん赤旗」
主張
被災者支援
住民の希望支える万全の策を
東日本大震災が起きた3月11日から、70日余りたちました。国会では第1次補正予算に続いて、ようやく「復興再生基本法」の審議が始まりました。ぎりぎりの避難生活を送る被災者への支援の点でも、地域の復興に不可欠な瓦礫(がれき)の処理や農業や漁業の再生の点でも、政府のあまりの対応の遅さにいらだつ毎日です。
全国から寄せられた義援金の配分でさえ、まだ3割という実情です。地震や津波で助かった命が新たに損なわれることがなく、被災者が希望を持って日常の暮らしを取り戻し、再生に取り組めるよう、支援の強化は急務中の急務です。
立ち遅れに自覚がない
大震災から2カ月余り、被災者は生活と地域を立て直すために、必死の努力を始めています。いま政府に求められるのが、上から一方的に被災地「復興」などの計画を押し付けるのではなく、被災者の生活を支え、被災者が希望を持って復興に立ち上がれるよう、なにより切実な願いに応えていくことにあるのは明らかです。
政府は先週末、被災地における「生活の平常化」に向けた当面の取り組み方針をまとめました。いわば「生活再建」の工程表ですが、その中身は1次補正までの対策のられつで、被災者に希望を与えるメッセージはありません。
なにより問題なのは、大幅に立ち遅れている避難所での生活の改善や仮設住宅の建設についての、反省がみられないことです。
被災した岩手、宮城、福島の3県を中心に、いまだに約10万人が避難生活を送っています。政府の調査でも、被災から2カ月近くたってもまだ食事はパンとおにぎりだけとか、お風呂に毎日入れないといった避難所が残されており、肺炎などによる「震災関連死」の増加も問題になっています。被災者が待ち望む、仮設住宅などの建設も大幅に立ち遅れています。
ところが政府の「当面の方針」は、避難所での生活は「改善してきている」、仮設住宅も「お盆の頃までの完成を目指す」と、立ち遅れを認めようとしていません。震災の発生から2カ月以上たって「改善している」のは当たり前です。問題は「改善」ではなく、不自由な避難所で生活しなくてもいい状態を、一日も早くつくることです。避難所生活は「改善している」といい、根拠も示さず仮設建設の目標を示すだけというのでは、政府にその自覚はみられません。
これまでの阪神・淡路大震災や中越地震などにくらべても、今回の東日本大震災では被災者支援の立ち遅れが顕著です。避難所で暮らす人の数ひとつとっても、阪神・淡路大震災では1カ月後から大幅に減り、中越地震では2カ月後にはゼロになりました。問題解決に一刻の猶予も許されません。
国が責任をもつ支援こそ
いま被災地では、政府は目標を示すだけで、実行は自治体任せにしているため、義援金や支援金の配分も、避難所の生活改善や仮設住宅の建設も、瓦礫の処理や農地や漁港の再建も進まないことが大問題になっています。自治体自体が被災し、大きな被害をうけている中で、自治体任せではことが進まないのは明らかです。
政府は責任をもって被災者支援に取り組むべきです。政府として必要な対策は遅らせず、2次補正も直ちに具体化すべきです。