2011年5月23日(月)「しんぶん赤旗」

原発事故―問われる政党の立場

共産党 「原発撤退 ゼロへの計画を」 一貫した主張が政治動かす


 原子力行政とエネルギー政策をどうするか―。福島第1原発の事故を受けたいま、国民の命と未来がかかったこの問題で政党の真価が問われています。


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(写真)菅直人首相(右)に要請する志位和夫委員長=17日、首相官邸

 原発の「安全神話」が根本から崩れる中、NHKの世論調査(13日〜15日)で、原発の縮減・廃止を求める声が前月より13ポイント増え、57%と半数を超えるなど世論の大きな変化が起こっています。

 日本共産党は、1961年に、日本最初の商業用原子炉である東海発電所(茨城県)の建設工事の中止を要求する決議を採択して以来、一貫して原発立地に反対し、原発の持つ危険性を訴えるとともに政府の責任をただしてきました。

 今回の福島原発事故を受けて、政府に対し「原発からの撤退を決断し、原発をゼロにする期限を切ったプログラムの作成」を求めています。党本部には「志位さんがメーデーで『原発ゼロ』を呼びかけたことに、たいへん感動した」(長崎市、被爆者)、「『原子力村』の利権構造につかりきった他の政党では一部の心ある議員の異議申し立ても封印されてしまう。日本共産党の姿勢はたいへん心強い」(東京、男性)などのメールや電話が相次いでいます。

 こうした日本共産党の政策と主張が、福島原発事故後、国民の強い世論と相まって政治を動かしています。

首相「見直す」

 菅直人首相が、2030年までに原発を14基以上新増設する「エネルギー基本計画」について「白紙から見直す」と初めて言及したのは日本共産党の志位和夫委員長が3月31日、「(計画は)きっぱり中止すべきだ」と首相に求めた会談の場でした。

 翌日のほとんどの地方紙や一部全国紙が1面で報道し、海外のマスメディアにも波及したことは、その衝撃の大きさを物語っています。

 「エネルギー基本計画」は菅政権発足(昨年6月)直後に閣議決定したものですが、志位氏はその3カ月も前から「厳しく反対する」と表明(同年3月21日の会見)し、自然エネルギーの本格的利用への抜本的転換を求めていました。

 首相はさらに18日の会見で、原子力行政では「チェック機関と推進の立場が、同じ役所に共存していた」と問題視、「根本的な改革」に言及しました。推進機関から分離・独立した規制機関は日本共産党が、再三求めてきたことです。

 首相は浜岡原発の運転停止要請(6日)を行いました。同原発についても、日本共産党は国会で30年前から東海地震の震源域の真上にあることを指摘し、停止や廃炉を要求してきました。

「出色」の声も

 「毎日」(21日付)は、岩見隆夫客員編集委員のコラムを掲載。不破哲三社会科学研究所所長の「原発災害講義」(14日付「しんぶん赤旗」掲載)を「出色だった」と評価する岩見氏は、原発問題を二十数年間にわたり「追及してきた実績が講義の裏付けになっている」と、日本共産党と不破氏の一貫した立場に注目しています。


どうする国民の命と未来

政権・民主 「反省」するも脱却できず

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(写真)警戒区域内に一時帰宅するため防護服を着る住民=10日午前、福島県川内村

 「私自身が安全神話を信じ込んでいたことは確か。いまや安全神話はまったく失われた」

 海江田万里経済産業相は、日本共産党の吉井英勝議員の追及(4月20日、衆院経産委員会)に、安全神話につかって「過酷事故」を想定せずにきたことを認めました。

 菅直人首相も、日本共産党の志位和夫委員長との会談(3月31日)で、「原発の総点検ももちろん必要だが、今後の原子力の利用について根本的に安全性の議論が必要だ」と述べるとともに、「エネルギー計画」の白紙での見直しに言及しました。

 「安全と言ってきたではないか」。避難を余儀なくされた福島第1原発事故の被災住民の怒りの声、広範な国民の不安と疑問の声に押され、民主党政権は「安全神話」への“反省”を示さざるを得なくなっています。

今後も柱に

 しかし、原発依存から脱却したかといえばそうではありません。菅首相は5月18日の記者会見では、「エネルギー計画」の「見直し」の方向として、従来の化石燃料と原子力という二つの柱に、「自然エネルギーと省エネルギーという2本の柱を加えていく」として、原子力発電を基本計画の「柱」として維持することを表明。さらに「原子力は安全性をいっそう高める中での活用を考えていく」と述べました。

 定期点検などで停止したまま再稼働できずにいる各地の原発についても、「安全性が確認されれば稼働を認めていく」としたのです。

 運転停止した静岡県の浜岡原発のみならず、日本の各地の原発の多くが活断層周辺にあり、そこで巨大地震が発生した場合、大事故につながらない保障はありません。危険を直視せず、再稼働を認め、エネルギー政策の基本に原発を位置づけるのでは、福島事故の教訓を真に受け止めたことになりません。

 民主党の岡田克也幹事長も青森県知事選挙の応援で同県大間市を訪れ、建設中の大間原発について「安全性を高めながら利用していく」と発言(15日)。各地で停止中の原発についても「一定のハードルのもと、きちんと動かしていく」と述べました。

族議員抱え

 原子力政策をめぐり政府・民主党があいまいな態度をとる背景には、東京電力や関西電力など電力会社でつくる労組(電力総連)が推す議員や、自動車、電機産業労組出身議員を多く抱えている問題があります。

 政府内には、福島原発事故を「神の仕業」とうそぶき、いまだに原発推進を「間違いでない」と言い放つ与謝野馨経済財政担当相も抱えています。

 菅首相が「独走」して浜岡原発の停止を要請したことや、「エネルギー基本計画」見直しに言及したことに強く反発する議員も多数おり、「党内論議をしても決してまとまらない」(関係者)という声も漏れてきます。

自民・公明 責任に口つぐみ開き直り

自民党

 「(原発は)絶対大丈夫だという検証を徹底的に行わなかったことも、われわれは反省しなければならない」

 自民党の石破茂政調会長は21日、青森県知事選応援の街頭演説で、こう“反省”してみせました。しかし、その後すぐに、「原子力というエネルギーをどのように安全に維持していくかということから目をそらしてはならない」とし、原発推進の姿勢に何ら変わりがないことを表明しました。

 現在日本にある原発54基の建設すべてを推進してきた自民党。福島第1原発事故後は、民主党政権の事故対応のまずさを激しく追及する一方、大災害の根源をつくってきた自らの責任には口をつぐむ無責任な態度を続けています。

 福島原発の事故当初に「原発推進は難しい」(3月17日)としていた自民党の谷垣禎一総裁も、「原子力行政はもっと胸を張るべきだ」(米倉弘昌日本経団連会長)という財界の要求を受け、わずか1週間で意見を撤回。今では「日本のエネルギー事情からすると、それ(原発推進)は決して根本的に誤っていた選択ではない」(5月14日)と開き直っています。

 自民党内で東日本大震災後に発足したエネルギー政策合同会議には、甘利明元経産相をはじめ原発推進派がずらり。「原子力政策のあり方についても再検討を行う」としていますが、検討項目は「リスク管理に適した原子力関連施設の設計のあり方」など推進の方向のものばかりです。「地下式の原子力発電所」を提唱する議連までできる状況です。

 自民党結党前から原発推進の中核を担ってきた中曽根康弘元首相にいたっては、15日のテレビ朝日系番組で「原発そのものが失敗だったのではないか」と問われ、「それは、反文明の考え方」だと即座に否定。「例えば、飛行機というものは非常に便利なものだけれども、墜落する危険性がある」と、本質的に未完成で危険きわまりない技術である原発の災害を航空機事故と同一視する暴論まで披露しました。

公明党

 公明党は結党以来、原発を推進し、旧社会党などに“原発推進をはっきりせよ”と迫り、自公政権で「原子力発電を基幹電源として推進する」(03年10月、閣議決定)との立場を明確にしました。事故後、公明党も政権を攻撃する一方、原発推進の責任に口をつぐんでいる点では自民党と同じです。

 同党の斉藤鉄夫幹事長代行は、福島原発事故後も「再生可能エネルギー、原子力をバランスよく活用」(公明新聞4月6日付)などと、原発に固執。首相による浜岡原発の停止要請について、魚住裕一郎参院議員は20日の予算委員会で「政治的パフォーマンス」と切り捨てました。

 地方議会でも、東京都清瀬市議会で浜岡原発の即時停止を求める意見書の採択を前に議場から退席するなど、無責任な態度をとっています。

みんなの党 「私も以前は自民党」…では今の態度は?

 「私も実は以前、自民党の衆院議員を務めていたので…」。20日の参院予算委員会でこう述べたみんなの党の水野賢一議員は、「当時、(自民党の)エネルギー調査会などの会合に行くと、マスコミは外にいるのに、東電の人たちは後ろの席に座って、メモをしたり、聞き耳を立てていた」事実を明らかにしました。

 水野氏が「民主党政権下でも同じようなことをやっているのか」と問うと、東電の武藤栄副社長は「傍聴させていただくこともございます」と答弁。自民、民主と東電の癒着が明らかになった格好です。

 その水野氏。党を移って原発への態度を変えたかというと、この日の質問でも最後までそのそぶりは見せませんでした。





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