2011年5月22日(日)「しんぶん赤旗」

福島3号機

汚染水 海へ20兆ベクレル

東電推定 年間許容量の100倍相当


 東京電力は21日、福島第1原発(福島県大熊町、双葉町)3号機取水口付近から海へ流出した放射性物質の量が20兆ベクレルだったとする推定結果を発表しました。2号機取水口付近からの流出分と、意図的に放出した集中廃棄物処理施設の汚染水などを合わせ、約4720兆ベクレルとなります。

 3号機取水口付近にあるコンクリート製の立て坑から、11日午後4時5分ごろ、汚染水の流出を確認。立て坑につながる管路をふさぐ工事を行い、同日午後6時5分に流出は止まりました。

 東電は、立て坑の水位の変化や、汚染水の流れ方などをもとに流出していた期間や量を計算した結果、10日午前2時以降の41時間で約250トンの汚染水が流出したと推定。含まれていた放射性のヨウ素131、セシウム134、同137の濃度から、放射性物質の量を20兆ベクレルと見積もりました。これは、同原発の年間放出許容量の約100倍に相当します。

 同原発では、4月1〜6日まで2号機取水口付近から、約4700兆ベクレルの放射性物質が海へ流出。さらに、4月4〜10日まで集中廃棄物処理施設などにたまっていた約1500億ベクレルの放射性物質を含む汚染水を海へ意図的に放出しました。

 東電は、海水中の放射性物質の分析結果をもとに、3号機分の放射性物質は大半が同原発の港湾内に滞留しているとみられるとする一方、2号機分の放射性物質は99・9%が、集中廃棄物処理施設などの分の放射性物質は全量が港湾外に流出したとの見方を示しました。

 また、汚染水の拡散シミュレーションの結果、港湾外に流出した放射性物質はまず沿岸に沿って南側に拡散し、その後、黒潮に乗って東の方向へ流れていくことがわかったとしています。

 東電は同日、これらの推定結果を経済産業省原子力安全・保安院に報告しました。


解説

放射性物質の流出

種類ごと 海面以外も調査を


 東京電力福島第1原発(福島県大熊町、双葉町)から直接海へ流出した、4720兆ベクレルの放射性物質のほとんどが同原発の港湾外へ広がっていたことが明らかになりました。東電はこれまで、シルトフェンス(流出していた取水口付近の海に設置した幕)など拡散防止対策が効果をあげていると強調していましたが、実際には機能していなかったことになります。

 東電は、福島第1原発周辺の海水に含まれる放射性物質の濃度が「4月中旬をピークとして、減少に転じて」おり、「拡散シミュレーション結果も同様の傾向を示し、今後、さらに濃度の減少傾向が続くことが予想され」るとしています。

 しかし、東電や国が調べているのはヨウ素131とセシウム134、同137だけです。原発の運転中に発生する放射性物質にはさまざまな種類があり、種類ごとに海水中でのふるまいも異なります。拡散シミュレーションも海面近くのものしか公表されていません。

 海へ流出した放射性物質は、生物にさまざまな悪影響を及ぼし、その影響は人間にも及ぶことが懸念されています。どんな放射性物質がどの程度、海水や海底の堆積物、そこに生息する生物に蓄積しているのか、汚染の全容を解明し、国民の前に明らかにしていくことが不可欠です。(間宮利夫)





もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp