2011年5月21日(土)「しんぶん赤旗」
きょうの潮流
3月11日以降、どこへいっても聞く言葉があります。「津波は天災でも原発事故は人災」です▼中には、珍しい考えの持ち主もいます。東京の石原知事の「津波は天罰」発言は、記憶に新しい。政治家で、もう一人が加わりました。かつて、石原知事が応援していた人。「たちあがれ日本」を離れて菅政権入りしたとき、石原氏から「忠臣蔵から抜けた侍」とよばれた、与謝野馨氏です▼経済財政担当相の与謝野氏は、原発事故について「神の仕業としか説明できない」といいます。福島第1原発の津波への備えも、ほめあげます。「人間としては最高の知恵を働かせたと思っている」と▼人知を尽くしたが、神の方がうわてだった―。もし神がいるとすれば、神様に失礼でしょう。神を、原発にいたずらして放射能をまきちらす悪魔のように描くのですから。人間にも失礼です。「最高の知恵」をしぼってあの程度だったのか、という話ですから▼現実は、政府や電力会社が原発の「安全神話」にとらわれ、「最高の知恵」を集めようとしなかった結果です。昔の地震や津波の経験から学ばない。“大津波がくると危ない”と説く、専門家や日本共産党の警告に耳を貸さない…▼原子力業界に身を置いていたときもある、与謝野氏らしい発言かもしれません。ところで、神の仕業で東京電力に責任がないのなら、与謝野氏は原発災害の補償の請求書を神様にまわすつもりでしょうか。あるいは、国民に? 与謝野氏は、名うての消費税の増税論者です。