2011年5月20日(金)「しんぶん赤旗」
GDP3.7%減
震災 産業直撃
原発事故が追い打ち
国民生活重視の復興を
東日本大震災は、日本経済の土台を直撃しました。大震災で日本経済は急降下し、内閣府が19日に発表した1〜3月期の国内総生産(GDP、季節調整済み)速報値は、物価変動の影響を除いた実質で前期比0・9%減、年率3・7%減となりました。(中川亮)
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今回、大きく落ち込んだのは企業の設備投資(前期比0・9%減)です。大震災が供給サイドを直撃した形です。被災地のものづくりにダメージを与え、供給網の破損(サプライチェーン・ショック)をもたらしました。影響は日本だけでなく、海外での生産に大きな影響を与えています。
「阪神」の2倍
民間調査会社の調べでは、震災関連倒産が100社を超し、1995年の阪神・淡路大震災時のほぼ2倍のペースで倒産件数が増えています。厚生労働省の調べによると、3〜6月に実施または予定されている非正規労働者の雇い止めは6806人です。
内閣府が16日に発表した消費者動向調査では、雇用や消費、暮らし向きなどについての消費者の心理を示す消費者態度指数が震災の影響で大幅に悪化しました。また、景気動向指数についても、現状と先行きがともに過去最大の悪化となりました。消費者は先行きに対して大きな不安を抱えています。
経済産業省が18日に発表した第3次産業活動指数は全13業種で落ち込みました。
東北経済で大きな位置を占める農漁業が被害を受け、また加工・流通・小売業などの関連産業に影響が及ぶケースもあり、全体として大きな打撃を受けました。
深刻化する東京電力福島原子力発電所の事故による電力不足が日本の生産活動に追い打ちをかけています。原発事故による電力不足は、日本の電力供給の“原発依存”の体質の問題点を浮き彫りにしました。今後は、太陽光・風力・水力発電といった再生可能エネルギーの爆発的な普及をすすめていくことが必要です。
消費増税狙う
被災地の復興は、被災住民の生活と産業をどう立て直すかを中心にすえることが必要です。ところが、日本経団連や経済同友会などの財界から提言されているのは、環太平洋連携協定(TPP)の推進や道州制の導入、株式会社による農地所有、港の集約化といったもの。これら大企業の利益をあげるための復興政策では、被災地の住民の望む復興にはなりません。
復興財源として消費税の増税が検討されています。しかし消費税は復興財源としては最もふさわしくない税金です。復興財源を生み出すためには、負担能力のある大企業を引き受け手として、従来の国債とは別枠で“震災復興国債”を発行することが必要です。また、所得税の最高税率や法人税を臨時で引き上げるなど、負担能力のあるところに求めるべきです。
日本経済が大震災から真に復興するためには、労働者と中小企業を犠牲にして大企業だけが大もうけをする大企業本位の経済政策を根本的に転換することが必要です。
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