2011年5月20日(金)「しんぶん赤旗」
きょうの潮流
「予算(案)を参議院に送る直前に突如として修正案として出そう。もう時間がないから、あーあーといっているうちに通してしまおう」▼1954年、日本に原子炉をつくるための予算がついたいきさつです。語っている人は中曽根元首相。当時、衆院議員でした。政権党に“修正案に反対するなら予算を通さない”と迫り、認めさせました▼中曽根氏によれば、「それで日本の原子力は動き出した」。いまや、原発は54基におよびます。しかし、わが国の原子力事始めは、国会でのまともな議論を素通りした政治の取引から出発したのでした▼「憲法は日本の一番大事な国の決まりだ。なぜいま急いでやらなければいけないのか」。こちらは、2年前の民主党の参院議員会長の発言です。参院では憲法審査会規程の採決に応じない、という話です。規程は、憲法「改正」の原案を審査し提出する憲法審査会の運営手続きを定めます▼ところが、政権をとった民主は、自民や公明とともに規程を可決させました。「ねじれ国会」乗り切りへ自民に歩み寄った、といいます。「一番大事な国の決まり」を、取引の材料におとしめるつもりか▼原子力といい、憲法「改正」の準備といい、重大事をわけの分からないうちに通す政党・政治家。震災や原発事故への対応の遅れは「非常事態」を想定しない憲法の欠陥のせい、という説にいたっては責任逃れもはなはだしい。欠陥憲法だという「新憲法制定議員同盟」の会長は、いまも原発推進の中曽根氏です。