2011年5月20日(金)「しんぶん赤旗」
主張
連続マイナス成長
ゆがみ正し復興支える経済に
国内総生産(GDP)速報によると、1〜3月期の実質成長率は年率3・7%減で2期連続のマイナス成長となりました。
とくに家計消費や設備投資など国内民間需要の落ち込みが大きく響いています。東日本大震災と東電福島第1原発事故の深刻な影響がくっきりと表れています。
消費者心理も大幅悪化
家計消費は年率で2・2%減少しました。雇用と所得が悪化・低迷するとともに、大震災と原発事故によって消費者心理も大幅に悪化しています。
設備投資も供給網(サプライチェーン)の寸断の影響で年率3・5%のマイナスとなりました。被災企業から部品を調達する完成品メーカーが操業停止や減産に追い込まれ、そのメーカーに部品を供給する被災地外の企業も打撃を受ける連鎖が広がっています。
なにより、この状況を打開するためにも、被災者支援、復旧・復興に果たす国の役割が重要です。被災者の生活基盤の回復に国が責任を果たす力強いメッセージと、漁師や農家、中小業者らの債務を国の責任で凍結・免除するなど具体策を直ちに打ち出すべきです。それと同時に、原発危機の収束と住民が故郷に戻れる展望を、東電任せではなく政府の責任で、データの裏付けと根拠を示して明らかにする必要があります。
前期(昨年10〜12月期)もマイナス成長となっていたように、日本経済は大震災の前から雇用と家計、中小企業の回復が遅れて内需の低迷が続いていました。
他方で大企業はことし3月期の決算で50%以上の大幅な経常利益の増益となっています。「日経」(15日付)によると、3月決算の上場企業の手元資金(現金・預金や短期保有の有価証券など自由に使える資金)は一段と膨らみ、過去最高の52兆円に達しています。雇用や賃金、下請け中小企業にしわよせしてコストを削減し、積み上げた利益です。
労働者と中小企業、家計を犠牲にして一部の大企業が利益を増やし富をため込むという、世界でも異常な経済の「ゆがみ」が内需の弱さの根源にあります。ゆがみを正し、暮らしと経済に活力を取り戻してこそ経済危機を打開する道が開け、被災地の復興を支える国民的な底力を大きくすることもできます。
民主党政権は大震災後も大企業中心の「構造改革」に固執し、社会保障の抑制と消費税増税の「一体改革」を3年程度の間に実行するとしています(「政策推進指針」)。日本経済のゆがみをいっそうひどくして活力を奪い、復興にも障害になるやり方です。
内閣府によると4月の消費者態度指数は前月比で5・5ポイントの大幅悪化となりました。大震災と原発事故が消費者心理と内需を一気に冷え込ませています。見過ごせないのは自民党政権が消費税を2%増税した1997年には、これを超える過去最悪のマイナス5・6ポイントを記録していることです。
過剰な利益を活用して
求められているのは日本経済のゆがみを改めながら、国をあげて復興を進めることです。
そのためには大企業・大資産家への行き過ぎた減税を是正し、復興のための国債の引き受けを大企業に要請するなど、大企業の過剰利益とため込み金を社会的に活用する道を真剣に検討すべきです。