2011年5月19日(木)「しんぶん赤旗」
憲法審査会規程に対する紙議員の反対討論
参院本会議
日本共産党の紙智子議員が18日、参院本会議で行った憲法審査会規程に対する反対討論は次の通りです。
私は、日本共産党を代表して、憲法審査会規程案に反対の討論を行います。
なぜ、いま憲法審査会規程なのでしょうか。
そもそも憲法審査会は、4年前(2007年)、改憲手続き法の制定にともなう国会法改定で、改憲を目的とした憲法の調査を行い、「憲法改正原案」を審査し提出する機関として規定されたものです。当時、安倍政権のもとで自民党などが目指す9条改憲のスケジュールにそって、慎重審議を求める圧倒的多数の国民の声を無視し、強行成立させました。この横暴な自民党政治に国民はノーの審判を下しました。そうした経過から、今日まで参議院は審査会規程をつくらず、審査会を始動させてこなかったのであります。
ところが今回、菅政権は「ねじれ国会」をのりきる思惑で自民党の要求を受け入れたといわれています。憲法改正にかかわる問題を政権維持の手段にするなど、言語道断であり、断じて許されません。
提案者は、「改憲手続き法が成立して4年もたつのに、憲法審査会規程をつくらないのは立法不作為だ」としきりに言いますが、この議論は「憲法に改正規定がありながら、手続き法がないのは立法不作為だ」と言って手続き法を強行した4年前の理屈と同じです。
しかし、審査会規程がないことで、国民の権利が侵害された事実はどこにもなく、「立法不作為」論はそもそも成り立ちません。
だいたい国民は憲法改正を求めてはいません。
この十数年間、改憲勢力は執拗(しつよう)に改憲の機運を盛り上げようとしてきましたが、国民はそれをきっぱりと拒否してきました。今日にいたるまで、改憲勢力が主眼とする9条改憲を求める声は、どの世論調査でも一貫して少数であり、多数になったことは一度もありません。
したがって改憲手続きを整備する必要は、まったくないのです。審査会規程が未整備であることを問題にするのなら、むしろ、改憲手続き法そのものを廃止すべきです。
しかも改憲手続き法の内容は、国民主権の原理に反し、どんなに投票率が低くても国民投票が成立し、有権者の2割台、1割台の賛成でも改憲案が通る仕組みとなっており、公務員や教育者の国民投票運動を不当に制限していることなど、きわめて不公正で反民主的なものです。
だから、民主党も手続き法に反対し、衆議院の審査会規程に反対したのではありませんか。
参議院では、手続き法の採決に際して、民主党が提案し、最低投票率の問題など手続き法の根幹にかかわる18項目の付帯決議を議決しています(2007年5月11日憲法特別委員会)。この付帯決議で指摘された問題は、今日までまったく議論されていません。
にもかかわらず、民主党は、衆議院で反対したものと同じ内容の規程案を自ら提案し、何らの議論もなく決定しようとしています。いったい国民にどう説明するのでしょうか。その姿勢がきびしく問われています。
いま、未曽有の大震災と原発事故のもとで、政治がやらなければならないことは、生存権を保障した憲法25条を生かし、憲法の立場に立って、何よりも人命と生活を最優先にして、被災者を救援し、原子力災害の危険を除去し、そして生活再建と復興にむけてあらゆる手をつくし、全力をあげることです。こうした重要課題が山積しているときに憲法審査会規程を制定することは、断じて認められません。
すべての人々が安心して平和に暮らす権利を定めた日本国憲法の精神と原理を全面的に生かしていくことが求められていることを強調し、私の反対討論を終わります。