2011年5月19日(木)「しんぶん赤旗」
きょうの潮流
昔々、フランスの王様が狩りに行って道に迷いました。仕方なく、森の炭焼きの小屋に泊まったそうです▼そこへ、炭焼き職人が仕事から戻ってくる。さあ休もう。ところが、王が自分の椅子を占領しているではないか。炭焼きがいった。「炭焼きもわが家では主人だ」。日本のことわざでは、さしずめ「釜をたらいに使うような貧しい家でも我が家は楽しい」といったところでしょう▼東日本大震災で被災した建物は、全・半壊だけで13万戸近い。被災者は、一刻も早い仮設住宅の建設を望みます。民間の、被災者の住宅づくりへの支援も始まっています。たとえば、国産の木材だけで人の体と心にやさしい天然住宅を建てる運動を興してきた、東京の団体です▼全国から資金を募り、すぐに建てられ増築や移築もできる、安い値段の復興住宅をつくろう。東北の木材で、仕事も地元の業者で。もともと、東北の木を使って各地に天然住宅を広めてきた団体でした▼ところで、東北の木をまず復興に回せば、被災地以外に家を建てる場合、木材をほかで調達しなければなりません。この団体も、西日本の天然住宅用に地元産の木を求め、西日本の山に分け入りました▼すると、志を同じくする人はいるものです。地元産の木だけで、木の乾燥も人工ではなく自然の天日にこだわって住宅づくりを提案する、製材業者や林業家の集まりです。想像します。こんなつながりが網の目のようにでき、震災の復興とともに日本の林業の再建がすすめば…、と。