2011年5月19日(木)「しんぶん赤旗」

主張

政府「政策推進指針」

暮らし最優先への抜本転換を


 政府は17日の閣議で、東日本大震災後の政策運営を定めた「政策推進指針」を決定しました。

 その中で「経済財政運営の基本指針」として、「潜在的な成長力を回復する」とともに「財政・社会保障の持続可能性の確保」などを着実に進めるとしています。

 「潜在的な成長力の回復」という表現は、自民党政権のときから大企業の国際競争力を強める「構造改革」を指す言葉でした。「財政・社会保障の持続可能性の確保」は、もっぱら社会保障の抑制と消費税増税の方針を示す用語として使われてきました。

3年程度で消費税増税

 社会保障と税の「一体改革」に関する「集中検討会議」は、社会保障の抑制路線を強める姿勢をあらわにしています。12日の会議では厚労省が、消費税増税を前提にして、医療・介護や生活保護の給付を抑制する「改革」案を示しました。主要メンバーからも「年金支給開始年齢を引き上げるべきだ」「負担増が必要だということを、まず確認してから議論すべきだ」という意見が出ています。

 政策推進指針は「一体改革」について「昨年末の閣議決定に従って6月末までに成案を得る」としています。従来の方針通り、暮らしと経済に大きな打撃を与える社会保障の抑制と消費税増税を「一体」で打ち出す構えです。

 見過ごせないのは、短期の方針として今後3年程度の間に「一体改革」を「実行に移す」とはっきり掲げていることです。

 高齢化が進んでいる被災者の生活と健康を支えるためにも、社会保障は抑制から拡充に転換することが求められます。民主党政権からは復興財源にも消費税増税をという声が上がっていますが、消費税の増税は被災者にも負担増を押し付けて、苦しみに追い打ちをかけることは明白です。

 社会保障削減と消費税増税の「一体改革」は暮らしと経済を痛めつけるだけではありません。1997年の消費税増税など庶民増税と医療費負担増は景気を急降下させ、税収を大幅に減少させました。近年は当時と比べても国民の所得が大きく減っており、「一体改革」による家計と内需への打撃は計り知れません。大震災と原発事故の被害が加わり、厳しい経済・財政状況のもとで内需を破壊し、税収を落ち込ませて財政まで悪化させる―。取り返しがつかない大失政です。

 財界と米国が要求している環太平洋連携協定(TPP)交渉への参加判断の時期は、6月までとしていた方針を変更し「総合的に検討する」とのべています。例外のない関税撤廃で日本の農林漁業を壊滅させるTPPへの参加は、これらを基幹産業とする被災地の復興への努力を押しつぶす暴挙です。参加そのものを断念すべきです。

 原発事故で破綻したエネルギー戦略も「見直しに向けた検討を開始する」と及び腰です。原発からの撤退を決断するよう求めます。

命も暮らしも守れない

 大震災は雇用や医療・介護、地域経済を痛めつける「構造改革」では国民の命も暮らしも守れないことを浮き彫りにしました。財界・大企業の利益を優先して国民に負担増を押し付けるやり方では経済も財政も再建できません。

 大企業の応援から国民の暮らしを最優先にした経済・財政政策への転換こそが求められます。





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