2011年5月18日(水)「しんぶん赤旗」
主婦年金
過払い分返還盛り込む
社保審特別部会 切り替え漏れ「対応策」
夫が退職した場合に専業主婦が行う年金手続きの切り替え漏れ問題で、社会保障審議会(厚労相の諮問機関)の特別部会は17日、新たな対応策を了承しました。焦点となっていた、すでに年金を受給している人の扱いについて、過払い分の返還を求めることが盛り込まれました。厚労省はこの対応策にもとづき3年の時限立法として今国会への提出をめざします。
切り替え漏れだった人が年金記録を訂正すると約48万人が年金額が減ったり、無年金になったりするおそれがあります。このため、保険料の特例追納を10年間に限って認めるとしています。追納できず未納になる期間については年金受給資格(25年間の保険料納付)の加入期間と認めます。年金額には反映されないため、その分年金額が減ります。
10年の追納期間は、現在参院で継続審議中となっている国民年金保険料の追納期間を現行2年から10年に延長する法案にあわせた形です。
すでに年金を受給している人については、特例追納がない限り、今後受給する年金を減額します。また、過去5年にさかのぼって過払いとなる分の返還を求めます。ただし、無理のない範囲での返還にとどめるなどの措置を検討すべきだとしています。すでに年金を受給しているのは48万人のうち5・3万人です。
課長通達で出された救済策の対象になっていた人についても、今回の案にそって同様に年金額の見直しが行われます。
解説
無年金の解決は行政の責任
今回示された対応策は、年金記録訂正によって無年金・低年金となる人に一定の配慮はあるものの、厚労相が3月8日に示した、未納となる保険料の追納を全期間にわたって認めるとした救済策からは後退することになりました。
この問題の最大の要因は、行政が年金の切り替え手続きの必要性を十分に知らせず、実態把握を行ってこなかったことにあります。厚労省自身、当初は、「届出制度の適正な運営という面においての行政努力が不十分であった」「全てを自己責任というには酷なケースも多い」と行政側に責任があることを認めています。
専業主婦年金の制度が始まった1986年から98年まで、制度の周知や実態把握など行政の取り組みがほとんど行われず、98年から届け出漏れが判明した場合に手続きをするよう勧奨を行いましたが、これも十分ではありませんでした。その結果生じた今回の問題に、国の責任で対処するのは当然です。
日本共産党は、未納期間は過去にさかのぼってすべての期間の保険料納付を可能とするよう求めています。追納についても過重な負担にならないように減免制度を設けることも考えるべきです。
専業主婦だけでなく、無年金障害者など行政による周知が不十分だったために無年金となったケースについても、年金制度の中で解決を図るべきです。
問題の根本には、日本の年金の受給資格期間が諸外国からみても異常に長く、25年間加入しないと1円も年金が受けられない問題があります。また、国連の社会権規約委員会から勧告が出されているように、最低保障年金という枠組みがないことが問題です。
無年金、低年金の根本的な解決のためには、資格期間の短縮や最低保障年金を導入し、誰もが安心して老後を暮らせる制度にすることが必要です。(斎藤瑞季)
専業主婦の年金 サラリーマンに扶養される配偶者は保険料を納める必要がありません。夫が退職すると、保険料を納める必要が生じます。この手続きをしていないことが分かって年金記録を訂正すると、夫の退職以降の期間が未納となります。