2011年5月18日(水)「しんぶん赤旗」
東電工程表
冷却方法を見直し
目標達成時期 変更せず
東京電力は17日、福島第1原発事故の収束に向けた課題や目標を示した「工程表」改訂版を公表しました。1カ月たって見直したもの。原子炉冷却は、原子炉格納容器を原子炉圧力容器ごと水で満たす冠水(“水漬け”)作業を見直して、建屋にたまった大量の汚染水を使う「循環注水冷却」を先行させるとしました。数日前には1号機で大半の核燃料が溶融したなど深刻な事態が次々に判明したにもかかわらず、原子炉の安定的冷却を実現する(ステップ1)などとした目標達成の時期は、7月中旬のまま変更しませんでした。
この1カ月間で、2号機にくわえ1号機でも格納容器からの汚染水の漏えいが判明したほか、3号機でも同じ危険性が予想されており、注水の継続で建屋地下などにたまる放射能汚染水の大幅な増加が見込まれます。東電は、タービン建屋や原子炉建屋にたまった汚染水を、ポンプでくみ出して除染処理・塩分処理をしたうえで、冷却水として原子炉に再び注水する「循環注水冷却」の早期確立をめざすといいます。
今回の改訂で、余震や津波への対策、食事や休憩施設など作業員の生活・職場環境の改善を追加。汚染水流出が再び確認された海洋や地下水の汚染防止策を強化します。
東電の武藤栄副社長は会見で「大きく変更しなければいけないような状況の変化はなかった。全体的にほぼ考えた通りに進んでいる」と述べました。
これまで東電が1〜3号機原子炉内の核燃料の一部損傷しか認めてこなかった原子炉内の状況について、核燃料が溶融していたことが数日前に判明。当初から懸念されていた格納容器からの水漏れも、ようやく最近になって認めています。
さらに余震や津波対策を今になって追加したことは、事態にたいする東電の想定の甘さを浮き彫りにするものです。目標時期など十分な検討をしてきたのか疑問がもたれます。
■関連キーワード