2011年5月18日(水)「しんぶん赤旗」

政府工程表

東電全面賠償ふれず

原発事故 「冷温停止」裏付けなし


 政府の原子力災害対策本部(本部長・菅直人首相)は17日、福島第1原発事故の収束に向けた見通しと、被害者への対応策の実施手順を示した「工程表」を決定しました。「東電任せ」との批判を受けて策定された政府の工程表ですが、事故収束の見通しは、10月〜来年1月をめどに原子炉を「冷温停止」して安定化させるという東電の工程表が下敷きです。裏づけと根拠を示しておらず、政府の責任を果たしたものとなっていません。

 工程表では、事故「収束」の第1ステップとして7月中旬までに「放射線量が着実に減少傾向となっている」と記しました。しかし、1号機の炉心溶融(メルトダウン)に続いて2・3号機も炉心溶融の可能性が明らかになるなどの深刻な事態に対し、対策が実現可能なのかの裏づけは示されないままです。

 また、被害者・被害事業者への賠償については7月に中間指針をまとめ、今秋から受け付けと支払いを始める方向を示しました。

 重大なのは、賠償金の仮払いを原発から30キロ圏内で線引きしていることです。政府による出荷制限や、避難指示を受け家畜を処分した事業者などへの仮払いは5月末までに開始する方針ですが、風評被害で収入を失った農漁業者などへの仮払いには触れていません。東電に被害の全面賠償をさせるかどうかにも触れていません。

 仮設住宅は、8月前半までに1万5200戸を福島県内に建設する方針を示しています。住民の健康では、被ばくした放射線量などの調査を5月以降に始めるとしています。がれき・汚水・汚泥の除去に向けては6月ごろに現地調査を開始します。

 ふるさとへの住民の帰還のため、土壌汚染の除染手法の研究を5月以降スタートさせ、避難区域の解除を受けて除染を実施する方向です。





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