2011年5月16日(月)「しんぶん赤旗」

民主党政権 震災後も公共基盤を削減

民間委託拡大突き進む


 東日本大震災をめぐり、公立病院や消防力などを切り縮め、公務員削減や市町村合併で行政力を弱体化させた「構造改革」「地方分権」路線が厳しく問われています。ところが民主党政権は、自公政権の路線そのまま、震災後も公共基盤の民間委託拡大に突きすすんでいます。


公共施設運営権 民間に売却

 今国会で審議中のPFI法改定案(参院先議で参院を通過)には「公共施設運営権」の創設が盛り込まれています。施設の所有権は自治体などが持ったまま、運営権を民間事業者に売却。事業者は公共施設を運営して利益をあげます。公共サービス料金の設定も民間事業者ができるようにします。現行では料金設定には原則として地方議会の議決が必要です。

 この運営権は、不動産と同様に転売でき、借金のかたに抵当に入れることもできます。民間事業者は運営権を抵当に銀行や投資家から資金を集め、投資家は公共サービス事業から配当を得ると同時に、運営に関与できます。

 上下水道、公立の医療施設、公営住宅、都市公園など利用者から利用料を取る施設が対象となります。兵庫県加西市では、この方式で上水道を民営化しようとしています。

 これらは、公共事業として、だれにでも妥当な料金で安定して提供されるべき普遍性や安全性を後退させるうえ、国民の共有財産である公共施設を特定の事業者のもうけのために提供するもの。破綻した場合は、国や自治体が穴埋めすることになりかねません。

 今国会にはPFI法改定案と並行して、伊丹・関西空港統合法案が提出されています。伊丹・関西両空港を統合して新会社をつくったうえで、施設運営権を設定・売却しようとしています。

 港湾についても、PFI法改定とは別に、4月末に成立した改定港湾法で、公有地である埠頭(ふとう)や港湾施設を一体的に運営する港湾運営会社をつくり営業させる制度ができています。

税金や社会保険料の徴収も

 政府の行政刷新会議は、こうした動きをさらにすすめるため、4月28日に「公共サービス改革プログラム」を決定。道路、河川、港湾、上下水道、都市公園などの公物管理権の民間へのいっそうの「開放」を求めています。

 同プログラムは、現行ではできない「公金に関する債権回収業務」の民間委託を可能にすることも求めています。税金や社会保険料の滞納、国公立病院の患者負担の未収金分などが想定されています。

 2006年に成立した公共サービス「改革」法によって、国民年金保険料滞納者への納付勧奨や請求業務を民間委託できるようになり、テレマーケティング(電話による商品勧誘)業者などに委託されています。

 しかし、現行では徴収は日本年金機構にしか認められていません。健康保険料(社保)や税金の滞納、国立病院の未収金の回収も、現行では民間委託は困難です。そのため、同プログラムは、民間委託を可能にする法改定を検討するとしています。

 02年の法改悪で、保険料の徴収を民間委託できるようになった国民健康保険(国保)では、各地で社会保障とは無縁の非道な取り立てが行われ、自殺者を生む事態になっています。こうした事態を広げかねません。
 (西沢亨子)


 PFI法 「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の推進に関する法律」。1999年制定。民間の資金を活用して公共施設の建設、維持管理、運営などをおこなうもの。





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