2011年5月16日(月)「しんぶん赤旗」

2次補正予算速やかに (上)

一刻も早く希望ある施策を


 “復興への希望が持てる施策を一刻も早く打ち出してほしい”―東日本大震災の被災地のこんな願いに反して、菅政権は救援・復興のための2次補正予算案提出を7月以降に先送りしようとしています。菅直人首相はその理由として「復興構想会議で青写真づくりの議論をしている。(結論の)めどは6月末だ」と述べていますが、被災地では各分野から切実な要求が出されており、今国会での2次補正予算案の編成、成立は待ったなしです。


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(写真)津波で陸に乗り上げた漁船=3月27日、宮城県気仙沼市

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(写真)津波で冠水後、海水が引かない田=4月15日、仙台市若林区三本塚

 今月2日に成立した4兆円規模の第1次補正予算は、仮設住宅7万戸分の整備費やがれき撤去、商工業や農林水産業への融資などが盛り込まれていますが、それらは、いわば必要最低限の応急措置です。

 被災者生活再建支援制度では、全壊で最大300万円が支払われるはずですが、1次補正と都道府県などが拠出している基金をあわせても1000億円程度。10万世帯に100万円ずつ配ればなくなる規模です。上限300万円について首相は「引き上げが必要」と認めていますが、そのための費用も1次補正には盛り込まれていません。

 がれき処理に3519億円を計上したものの、松本龍防災担当相自身が「十分ではない」と認めており、環境省は6千億円台の国庫補助が必要とみています。

債務凍結 「せめてゼロから」

 日本共産党の志位和夫委員長らの被災地訪問(6〜9日)で、被災者の切実な願いが浮き彫りになりました。

 なかでも、商工業、漁業、農業にたずさわる被災者の共通した願いが債務の重荷からの解放です。「住宅ローン、機械のリース、既存の債務、マイナスではなく、せめてゼロから出発できるようにしてほしい」(石巻商工会議所の浅野亨会頭)「漁業者の多くは家もなくしており、借金だけが残っている。借金は棒引きか自立できるまで長期に据え置いてほしい」(宮城県漁協の船渡隆平専務理事)「土地改良、農機具への投資に加えてさらに今回の被災。二重三重の負債という農家もかなりある」(JA宮城中央会の佐藤純一常務理事)などの声が相次ぎました。

 大門実紀史参院議員は13日の参院予算委で、「二重債務」解消の枠組みを提案。菅首相は「大変検討に値する。しっかりと検討する」と答弁しました。そうであるなら、7月以降といわずすぐ検討すべきです。

漁業 生産から流通まで

 7道県で約2万隻の漁船が被災した漁業はどうか。津波で漁船の9割が流失したという岩手県漁連の大井誠治会長は、「漁船確保への公的支援は3分の2。漁協などの負担が重い」「1次補正には正直がっかりした。がれきの中から漁民に希望の光をともしてほしい」と強く求めています。

 宮城県漁協の船渡専務理事は、水産庁が補助率10分の9をうたう養殖施設の復旧支援についても、実際には減価償却分が補助対象から引かれ、2分の1引かれれば、45%にしかならないと指摘。「1次補正を超えた大きな支援が必要」と訴えました。

 漁業者が口をそろえて訴えるのは、漁業の被害は生産から加工・流通にまで及んでおり、「早く希望が持てる手を打たなければ、三陸の漁業は終わってしまう」(岩手県陸前高田市の漁業者)という危機感です。

農業 営農と生活両面で

 津波による流失・冠水などで農地約2万3600ヘクタールが被害を受けた農業でも切実な要求が出されています。

 約1万5千ヘクタールが浸水被害を受けた宮城県。JA宮城中央会の佐藤常務理事は、農地のがれきや土砂の撤去、塩分除去、用排水路の復旧には国の力が必要だと強調。一つの方法として、国による被災農地の買い上げ整備と再配分をあげました。

 同中央会は要請書でも、1次補正予算が成立してもなお、「いまだ被災農家への営農支援、生活支援の具体的姿が見いだせず、営農意欲の喪失が懸念されるなど本県農業は、きわめて厳しい状況にある」として、窮状を訴えています。

 「『もう一回農業をやりたい』という方がほとんど」(佐藤氏)という農業者。いま政治の姿勢が問われています。

 (つづく)





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