2011年5月14日(土)「しんぶん赤旗」

きょうの潮流


 先月末、本紙「みんなのアンテナ」欄に載った音楽家・中山英雄さんの投書に共感を覚えました。テレビで、NHK交響楽団が演奏するマーラーの交響曲第3番を聴いての、感想でした▼東日本大震災の1カ月前の、演奏の記録。「なのに、今の私たち日本人のために作曲・演奏されているかのような錯覚にとらわれた」「苦悩とたたかいつつ、未来を信じる心の叫びのような気がした」▼マーラーが1896年に完成した第3交響曲の長い第1楽章には、行進曲が繰り返し現れます。のちに、同時代の作曲家リヒャルト・シュトラウスが評しました。“メーデーの祭典に繰り出す労働者たちの、いつ終わるとも知れない行列を思い浮かべた”▼実際にマーラーは、ウィーンのメーデー行進にひょっこり加わったこともあります。彼は、行進曲風の楽章をよく書きました。もっとも親しみやすい第1交響曲からしてそうです。不気味で奇怪な葬列の行進。続く楽章は、何者かが打ちのめされては立ち上がり、最後の勝利をつかもうと進んでいるように聴こえます▼力強い足どりの行進で始まりながら、悲劇のとどめの一撃で閉じる曲もあります。たしかにマーラーの、絶望の色にそめられた深刻な表現は、聴き手の心をゆさぶってやみません。とともに、苦悩からの解放と救いを求めてたたかった彼の精神の道のりは、未来へと続いているのでしょう▼グスタフ・マーラーが没し、18日で100年。私たちとマーラーの、新しい100年が始まります。





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