2011年5月13日(金)「しんぶん赤旗」
きょうの潮流
東北の被災地に、ことしもツバメが帰ってきました。津波で壊れた巣を直すツバメもいて、復興を願う人々を励ましているそうです▼しかし、すっかり巣が失われていて困ったツバメは、どこへいったのでしょう。あるいは、原発事故で住民が避難している無人の町に帰ってきたツバメは、身の危険に感づいたでしょうか▼同じ「ツバメ」の名がつく鳥でも、クロウミツバメは魚をとる海鳥です。いま世界中で、ただ一つの島にしかみつかっていません。小笠原諸島の南硫黄島です。ぐるりの海岸線が7キロあまりのピラミッド型の火山島。無人島です▼断崖絶壁に囲まれてそそり立つ島の山の標高は、916メートルあります。関東の名山、筑波山より高い。クロウミツバメは、たえず雲のかかる頂上に近い森の中に巣をつくります。かつては、北硫黄島にもすみついていました。しかし、クマネズミに卵を食べられ、絶えてしまったようです▼第2次大戦直後まで人がいた北硫黄島には、クマネズミがたくさん入り込んでいました。南硫黄島のクロウミツバメも安心できません。二つの島の間に、太平洋戦争の戦場だった硫黄島が浮かびます。いま自衛隊基地があり、そこからなにかの拍子でネズミが流れ着かないとは限りません▼先週、ユネスコ(国連教育科学文化機関)の諮問機関が、岩手の平泉と小笠原諸島を世界遺産に登録するよう勧告しました。東北の被災地の人々にはもちろん、クロウミツバメにもうれしい知らせです。愛鳥週間は16日まで。