2011年5月12日(木)「しんぶん赤旗」
介護保険法改定案 審議入り
「要支援」 安上がりに
「軽度者切り」の突破口狙う
介護保険法改定案が国会に提出されており、11日に衆院厚生労働委員会で趣旨説明が行われました。「要支援」と認定された人へのサービスを、市町村の判断で安上がりなものにおきかえられる新たな仕組みを盛り込んでいます。大震災の非常時の中で、政府・与党は国民に内容を知らせないまま成立させようとしています。 (杉本恒如)
法案に盛り込まれている新たな仕組みは、「介護予防・日常生活支援総合事業」(総合事業)です。
介護保険制度では、「要支援」と認定された人は保険給付として訪問介護や通所介護などのサービスを受けられます。しかし新たな仕組みでは、「総合事業」を実施する市町村が、要支援者を保険給付の対象から外し、「総合事業」の対象に移すことができます。
「総合事業」には訪問・通所サービス、配食、見守りなどが含まれます。財源は介護保険財政から出るものの上限付きです。サービス内容、職員の資格と人数、施設設備、事業者への報酬と利用料について保険給付のような全国基準がなく、市町村の裁量でサービス切り下げが可能です。
ホームヘルパーの資格のないスタッフに任せるなど、安上がりのサービスにされかねません。配食サービスで十分だとして、ホームヘルパーによる調理などの生活援助をとりあげる動きも加速する恐れがあります。
全国一律の介護保険給付を受ける要支援者の権利をないがしろにし、市町村任せの事業に委ねることで給付費を削減する仕組みです。
政府は、大震災による財政負担を口実に社会保障削減論を強めています。
4月27日の社会保障審議会介護給付費分科会では、龍谷大学の池田省三教授が「(大震災を機に)要支援1・2は介護保険から外すべきだ」「おばあちゃんのお世話保険をつくったわけじゃない」と持論を展開し、「どこかで切らなきゃいけない。ならば新しい方式として自治体に任せる方法はいい」と発言。法案の「総合事業」が要支援者切り捨ての手段になるとの認識を示しました。
この方向は「軽度者切り」を求める財界の意向に沿うものです。
政府の「社会保障改革に関する集中検討会議」では、「軽度な利用者へのサービスは保険の対象外に」(経済同友会)、「軽度の要介護者等への給付の見直しを」(日本経団連)と財界が合唱。これに呼応する形で、財務省や経済産業省が軽度者への給付の見直しを主張しています。
法案の「総合事業」創設は、その突破口を開くものです。