2011年5月12日(木)「しんぶん赤旗」

「あたご」責任認めず

イージス艦衝突、2自衛官に無罪

横浜地裁判決


 2008年2月、海上自衛隊のイージス艦「あたご」が漁船「清徳丸」に衝突、沈没させ漁師親子が死亡した事故で、業務上過失致死などの罪に問われたあたごの当直士官(当時)、元水雷長の長岩友久(37)、元航海長の後潟(うしろがた)桂太郎(38)の両被告に対し、横浜地裁(秋山敬裁判長)は11日、「刑事責任は問えない」といずれも無罪(求刑禁錮2年)を言い渡しました。

 争点となった清徳丸の航跡をめぐり、検察側が作成した航跡図について秋山裁判長は「(依拠する海保の航跡など)航跡特定方法に問題があり、前提とする証拠の評価を誤ったもので検察側の主張を認めることはできない」と指摘しました。

 衝突の原因について、長岩被告の漁船への注視不足、後潟被告の誤った情報の申し送りを認めたものの、被告側の主張と同様に清徳丸の右転が衝突の危険を招いたとして、「あたご側に回避義務はなく、両被告が注意義務を負うことにはならない」としました。

 無罪判決について遺族らからは「納得できない」の声があがりました。

 海難事件に詳しい田川俊一弁護士は「航跡が異なる事件で被告が無罪というのはほとんど例がない」としたうえで、「検察の構図はまちがっていないが、証拠の収集と法廷での説明に不足があった。海難事故は陸の事故とは異なり、秒単位や距離の証拠は幅があって当然。検察も裁判所もそこを見誤っている。漁船の右転の動機の説明がないままの判決には疑問が残る」と述べました。


 イージス艦衝突事故 2008年2月19日午前4時6分ごろ、千葉県房総半島沖で、「あたご」が「清徳丸」と衝突。清徳丸の船長吉清治夫さん=当時(58)=と長男哲大(てつひろ)さん=同(23)=が行方不明となり、死亡認定されました。横浜地方海難審判所は09年1月の裁決(確定)で、衝突の主因があたご側にあるとして再発防止を勧告。防衛省は同5月、当直士官の判断・指示や艦内の連携に問題があったとする最終報告書を公表しました。





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