2011年5月11日(水)「しんぶん赤旗」
規制機関 専門性高めよ
原子力学会が提言
日本原子力学会(辻倉米蔵会長)の技術チームが9日、東京電力福島第1原発事故をうけて、原子力の安全性にかかわる教訓と対策についての提言を公表しました。そのなかで津波や電源喪失への対策、安全規制のしくみが不十分だったと指摘し、国の規制機関として米国NRC(原子力安全規制委員会)のような専門性の高い組織に統合・一元化することなどを提案しました。
提言をまとめたのは同学会の「原子力安全」調査専門委員会の技術分析分科会(主査・二ノ方壽東京工業大学教授)。事故の教訓を分析し、12項目にわけて短期・中期の対策を例示しました。(全文は同学会ウェブサイトに掲載)
日本の安全規制の問題として、津波のような、影響が大きいが不確実性の高い事象への考慮が不十分だったと指摘。安全研究や諸外国の規制動向などの新知見の反映が遅れ、「前例踏襲主義に陥り、安全性を常に追求するという規制の見直しに消極的であった」と述べています。
今回の事故対応の問題点としては、原子炉格納容器外の水素爆発が考慮されていなかったことや、使用済み核燃料貯蔵プールの冷却の失敗に言及しました。健康影響への説明不足や、緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)の公開が遅れたことなどの情報公開が不十分だったと指摘しました。
また、日本原子力研究開発機構で安全基盤研究が重視されていなかったことなど、苛酷事故の研究と成果の活用が不十分だったとしています。
日本原子力学会 原子力の平和利用に関する学術と技術の進歩、原子力の開発発展への寄与を目的として、1959年に設立された学会。役員には、電力会社や原発メーカー、大学・研究機関の原子力の専門家らが名を連ねています。